「結果主義」を貫くからこそ、グローバルで助け合い、
ベインとしてのパフォーマンスを最大化する

 

安達 広明

Hiroaki Adachi

ベイン・アンド・カンパニー
アソシエイト パートナー

外から見るだけでは見えにくいのがコンサルティング各社の「違い」だ。戦略系コンサルのBig 3に名を連ねるベイン・アンド・カンパニーのアソシエイト パートナー、安達広明氏に、同社が掲げる「結果主義」が、仕事や個人の成長にどのような影響を及ぼしているのか、その実態を聞いた。

入社の決め手は、「結果主義」の理念と、
それを支えるカルチャーへのフィット

Q
安達さんが、ベイン・アンド・カンパニー(以下、ベイン)に入社された経緯と、
現在の仕事について教えてください。

修士1年の時に、知人に「面白そうな会社があるから」と誘われてインターンに参加しました。今でこそいろいろな会社がインターン制度を設けていますが、当時は外資系の一部と広告系の会社くらいしかサマーインターンを実施しているところはありませんでした。

5日間のインターンに参加して内定をいただいたため、実は他の会社はあまり見ていないんです。ただ、最初に決まったから入社を決めたわけではなく、インターンを通じて社員と話すなかで「この会社で間違いない」と確信できたことが、入社の決め手です。

学科の先輩や一つ上の内定者の方にお会いして、コンサル業界の各社の話を聞いてみたのですが、当時は違いがあるとすればカルチャーくらいだなと思ったんですね。その中で、ベインのカルチャーと自分とのフィット感がずば抜けて高かったので、「ここしかない」と入社を決意しました。

 

安達 広明:ベイン・アンド・カンパニー|2010年新卒入社、アソシエイト パートナー|東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学修士。インターン・3ヶ月の米国留学を経て2010年4月、ベイン・アンド・カンパニー入社。不動産、食品・飲料、小売、エネルギー、情報通信、ヘルスケア、精密機械、金融、サービスなど幅広い業界において全社戦略・顧客戦略・デジタル戦略などの策定から実行支援まで、多岐にわたる分野のプロジェクトに参画。プロボノ活動として、Child Fund Japan の石巻復興支援事業の評価や中期計画の検証等を経験。

Q
どういうところで「カルチャーが合う」と感じたのですか?

ベインは創業時から「結果主義」を掲げています。ベインを語る上で、この言葉を抜きには語れません。言葉自体が印象的なので、私も聞いてすぐに頭に焼き付いたのですが、インターンに参加し、面接が進むにつれて、それが「本当に」意味していることを、だんだん知っていくことになりました。

そして、入社して何年も経ち、より理解が深まった今だからこそ言えることですが、ベインの企業カルチャーは、この「結果主義」にすべて結びついているんです。

ベインが1973年に創業した頃、「結果主義」の理念は革新的でした。当時のコンサルティングの世界は、戦略を立てて報告書にまとめ、クライアントに提出して終わり、というのが一般的だったからです。それに対して、当社の創業者ビル・ベインが異を唱えたわけです。

「結果」や「成功」といったものは、それを捉える人の価値観によって様々に形が変わりますが、少なくともいえるのは型どおりに報告書を出したからといって、その瞬間に価値が生まれるわけではないということです。ですからベインでは、「クライアントに価値を生み出せているのか?」という問いを終始念頭において、単なる戦略の提案だけでなく、それを実現するにあたっての現実的で実行可能なアドバイス・支援までを行います。

今では三大プレミアムコンサルティングファームの一角と言われていると聞きますが、われわれが創業当時から急成長を続けている理由は、全グローバルオフィス共通のこのような特徴的なサービスが評価されてのことだと考えています。

また価値を出せる仕事への注力というのは、すなわちクライアント企業の根幹を左右するような最重要の経営課題を扱うことにつながります。必然的にベインが扱うケースではトランスフォーメーションと呼ばれる企業改革・企業再生といったプロジェクトを扱うことが多くなります。そういったプロジェクトは当然ながら難易度も高く、クライアントからの期待も非常に大きいため、新卒社員に求められる仕事の質や成長速度は、必然的に高くなります。そういった大きなやりがいを感じながら早いスピードで成長できる環境で仕事ができるという点も、入社を決めた要素の一つです。

「結果の伴わないM&Aはやるべきでない」
お客様の耳の痛いことも言えるかどうか

Q
ただ、今ではどこのファームも
「結果」は大事にしているのではないかと思えます。
安達さんが「ベインの結果主義」を実感する場面はありましたか?

一つ象徴的な事例があります。クライアントがある会社のM&Aを検討しているので、その是非を検討してほしいというものでした。

結論からいうと、そこでわれわれが出した答えは「M&Aすべきではない」でした。

買うべきか買うべきでないかを検討することは、コンサルタントに課せられた一つの仕事ではあります。ただ、その案件が出てきた時点で、買収側はどうしてもある程度期待を抱くものです。

またその案件は、ディールが成立すればその後の戦略策定などの長期プロジェクトに発展する可能性のあるものでした。しかしデューデリジェンスの段階で、クライアント企業がその会社をなんとか買収できても、買収価格を上回るようなシナジーが得られないということが分かり、最終的にクライアントのためにならない、買収はすべきではないと判断したのです。それをクライアントに提言して、プロジェクトとしては数週間のみで終了となりました。コンサルタントとしても、M&Aを成功させられれば買収後の戦略策定まで携わることができる、すなわち契約期間が長くなり、最終的に頂ける報酬も多くなるので、実はM&Aが成立するほうが望ましいわけです。

でも「結果主義」の考えに基づいて考えれば、これはもう当然のことですが、クライアントのためにならないことは絶対にできません。買収が不適切であるという強い確信が得られれば、一刻もはやくクライアントに提言し、素早く適切な意思決定を後押しする。われわれが介在することでクライアントの企業価値を高められることだけをするのが「結果主義」である。そのことを実感した経験でした。実はこのクライアントは、元から我々のこのような姿勢を評価・信頼していただき、重要なM&Aのパートナーとして起用して頂いたという経緯がありましたので、その期待にお応えできた事例として、今もはっきり覚えています。このような「結果主義」の体現が、クライアントの皆様の共感・支持を得られている一番の理由だと考えています。

 

海外のパートナーであっても、二つ返事で相談にのってくれる

Q
その「結果主義」は、
企業カルチャーとどのように結びついているのでしょうか。

一人ひとりのコンサルタントがプロフェッショナルであることは当然求められるのですが、一方で、個人に責任を負わせるのではなく、ベインという組織として「結果」を出す、価値を提供することに強い意志を持っているように思います。

私は入社後これまでの10年間で、数十件に上るプロジェクトを経験してきましたが、いずれもトランスフォーメーションをはじめとする経営トップの方々の、優先度・重要度の高い課題に対峙するものでした。

クライアントとの会議や報告の場面には、会長・社長といったトップマネジメントの方もいらっしゃいますが、1年目からそういう場に出席し、自分が分析を担当した部分に質問をいただいたらそれにきちんと回答する、そういったことが重要な仕事になります。

しかし実際のところ入社3年目くらいまでは、自立した一人のコンサルタントとして高いバリューを出すなんてそう簡単にできるわけではありません。ついこの間まで学生だったわけですから。そういうなかで私は、「期待に応えられる価値が出せているか」と自問自答しながら、必死に食らいついてやってきました。

ただ、当社の面白いところは、そのように高いハードルが課される一方で、「どう越えるか」を皆が教えてくれることです。直属の上司や親しい先輩に限った話ではなく、誰でも聞けば教えてくれる。立場の上下に関係なく、同期同士でも教え合います。

また、年次が進むにつれて気付いたことですが、高くて厳しいと思っていたハードルも、実は自分のスキルを“少し越える”レベルの高さのものが直属の上司から意図的に与えられているんですね。これは制度としてそのようなやり方が推奨されているというのもありますが、ベインのカルチャーとして自然とそうやるようになっている、と感じています。

Q
どうしてそのようなカルチャーが出来上がったのでしょうか。

自分がそうしてもらったから他の人にも自然とそうしている部分はあると思いますが、一番はサポートし合える、チームワークができる性分を生来備えていることが採用基準の一つになっているからだと思います。それと同時に入社後も「どれだけチームメンバーの成長に貢献できたか」、「チームとして成果を最大化できたか」が重要な評価項目の一部として見られることも大きく作用していると思いますね。

ただ、それにしても不思議なくらい徹底しているんですよね。しかも、ベインの日本オフィスだけの話ではなくグローバルで共通のカルチャーなんです。

例えば、日本で担当しているプロジェクトのある課題に対して、アメリカのニューヨークオフィスに先行事例があったとします。そのプロジェクトを担当していたパートナーに「話を聞きたい」とメールをすると、二つ返事で30分でも1時間でも時間をとって教えてくれます。今まで一度も実際に会ったことのないコンサルタントであってもです。そうすることで、彼の評価が直接的に上がるわけでもないのに。これはベイン特有のグローバルサポート体制なのかもしれません。

一人の人間ができることには限りがありますし、あらゆることを知っているわけではありません。でも、知見のある人と5分話すだけで道が開けることもありますよね。

「結果主義」だからこそ、ベインのメンバーのアウトプットがより良くなるなら、経験や知識を惜しみなくシェアすべき。そういう考えに根ざして、今のカルチャーが出来上がったのではないかと思います。

 

海外共通のトレーニングと、海外プロジェクトアサインにより、
グローバル連携を加速させる

Q
グローバルで共通という点には驚きました。
ただ、同じ会社だとはいっても、海外のオフィスに連絡して話を聞くということは、
そう簡単にはできない気もします。

ベインの場合、すべてのコンサルタントはグローバル採用扱いとなります。だから、日本オフィスで人を採用する場合であっても、グローバルファームとしてのベインが採用する形になっていますから元々垣根がありません。採用基準も世界共通です。

それと、ベインでは、「入社○年目のコンサルタント」や「マネージャー」「パートナー」といったクラス別に、2年に1回くらいの頻度でグローバル・トレーニングに参加します。全世界のオフィスから1カ所に集まって、共通のトレーニングを行います。講習やグループワークを数日から2週間くらいにわたって行います。合宿のようなイメージですね。このような機会を通し、どこのオフィスに籍をおいていても、グローバル共通のグローバルスキルを身に着けることが出来ます。

そして、トレーニング後に各オフィスに戻っても、何かあれば気軽に声を掛けられますし、分からないことがあれば聞くということも非常にやりやすくなるわけです。また別のオフィスの初めての相手とやり取りするときも、「あなたのオフィスの◯◯さん、この前トレーニングで会いましたよ」みたいに話も弾むので、非常にスムーズに仕事もできるんです。

Q
グローバル・トレーニングの機会が、
海外との連携をしやすくしているのですね。

はい。このような環境があることで、例えば日本オフィスが非常に忙しい場合に、欧州からコンサルタントにサポートに来てもらって混成チームで3カ月のプロジェクトを遂行する、といったことも容易にできるようになります。逆に、東京オフィスのコンサルタントが短期間海外オフィスのプロジェクトに関わることもあります。どこにいても、グローバルプロジェクトに関わることが出来、グローバルで通用するスキルが身に着けられる機会が多くあります。

これは、個人のキャリアの観点からも良いことで、海外のプロジェクトに参加したい、海外勤務を経験したいと思った時に、その道筋をつくりやすい環境だと言えます。

英語力を心配されるかもしれません。私も入社当初は英語力に自信がなくて、できれば最初は日本語のプロジェクトに入れてほしいという希望を出したこともありました。

ただ、現在だと日本のオフィスでクライアントが日本企業のプロジェクトであっても、最初から最後まですべて日本語だけで遂行できる案件はほとんどありません。同じ業界の成功事例が海外にあればそれを参考にしますし、経験を積んだパートナーも海外にたくさんいますので、話を聞かない手はないからです。

そこで、入社前後の語学留学や、仕事を通した英語教育など、英語力習得のために様々なサポートをファームから受けることが出来ます。そして何よりも必要に迫られるので勉強する。結果として英語力が高まっている。私の場合はそんな感じでこれまでやって来ました。

後輩の育成には、投資も惜しまない
全てはベインとして「結果」をだすために

Q
それ以外に、個人の成長をサポートする制度や体制はありますか?

PD(Professional Development)チャットというものがあります。

これは、プロジェクトの直属の上司と1対1で行われるメンタリングです。一般的にいう1 on 1面談のようなものですね。1~2週に1度、30分ほど時間をとって、週次の目標の達成状況を確認したり、定性的な部分でよかったこと、改善すべきことを話し合ったりする場です。頻度高くフィードバックサイクルを回すことで、短期間で成長を実感できますね。

先ほどのグローバル・トレーニングの話でもお分かりいただけると思いますが、ベインでは人材育成に対して熱心に投資しています。なぜかというと、これも「結果主義」を貫くためなのです。

私も今はアソシエイト パートナーとなり、後進を育てる役割を担うようになりましたが、まだ経験が浅いコンサルタントも早く育ってくれれば、それだけわれわれのパフォーマンスは高まります。かつて上司や先輩に教えてもらったように、私も今は、後輩に聞かれたらしっかり時間をとって教えています。全体がレベルアップすれば、クライアントに提供できる価値がより高まりますから。

加えて、このPDチャットでは、仕事上のスキルについてのみならず、今後のキャリアについても相談をすることができます。一番近くで自身の面倒を見てくれている上司が、「将来的にこういうことをしたいから、ベインではこういうことを学びたい」といった相談に乗ってくれます。また、チームマネジメントの仕方やコミュニケーションの取り方などについて、上司が部下からフィードバックを受ける場でもあります。双方向の議論をすることで、部下のみならず上司にとっても成長機会の場であるわけです。

向上心のある人であれば、成長の機会はいくらでもある環境だと思いますね。学生時代、インターンに参加したときに「カルチャーが合いそう」と思ったのは多分に直感的だったかもしれません。でも、入社して数年働いてみて、あの頃はまだ見えていなかった「結果主義」の本質が分かってきたように思います。

「戦略フォーカス」で得られるコンサルならではの専門性

Q
ベインではどのようなプロジェクトが多いのでしょうか?

ベインでは結果主義のもと、変化の激しい市場でも成長し続けたいという高い志を持った、将来を担う企業の最重要課題の解決を支援しています。そのため、ベイン東京オフィスでは特に日本や世界を代表する企業の企業戦略で、かつ全社レベルの改革に関わるプロジェクトを扱っています。具体的には、プロジェクトの半分程度はトランスフォーメーションのような全社戦略、それ以外も企業にとって重要なM&A、顧客戦略、組織再編などのプロジェクトを担っています。ベインのプロジェクトでご一緒するクライアントは大胆な変革を求めている企業が多いので、こちらとしても非常にやりがいがあります。またプロジェクトのおよそ2割を占めるデューデリジェンス関連の案件も、グローバルで9,000以上のプロジェクトを手掛けており、ベインのシェアが圧倒的に高い分野です。事業の本質的な価値を短期間で正確に評価するという非常に難易度の高い仕事ですが、重要な論点を見極めて、可能な限り深堀りをする問題解決のアプローチには定評があります。

どのようなテーマのプロジェクトであれ共通して言えるのは、やはり「結果」を出すことに特に重点が置かれた、非常に難易度の高いものであるということです。ベインはそのような案件のみを扱っていると感じています。

Q
そういったプロジェクトでも
一貫して結果を出せるのはどうしてなのでしょうか?

普遍的な課題解決力に加え、経営者にとって必要なテーマを濃密に経験することで「経営のプロフェッショナル」として専門性を身に付けられるからです。経営者が直面する課題は、全社戦略、個別事業戦略、成長戦略、M&A、コスト削減、組織再編など様々です。一方、事業会社にとっては、全社戦略やM&Aなどを多くの社員が常に経験するものではありませんので、我々の過去の経験や知見をもとに、真の課題が何なのかを特定し、クライアントと共に有効な解決策を講じ、企業価値の最大化に貢献するのに大変役立ちます。また特にベインでは難易度の高い問題解決を必要とする案件が多いので、結果としてそのスピードと質が非常に高いレベルに鍛えられます。ベインの卒業生も、こうして身に着けた経営者スキルをもとに、幅広い業界で経営者・事業責任者など幅広く活躍されていることからも、ベインで得られる学びの重要性を身にしみて感じます。

Q
最後に学生に向けてメッセージをお願いします。

コンサルティング業界の仕事、得られるスキルは学生からは見えくい部分があるかと思います。私自身もインターンに参加するまでは不透明な部分が多かったのですが、その時に感じた仕事の楽しさ、やりがい、そしてベインの社員に感じた魅力は今でも変わっていません。ベインに新卒で入社して既に10年になりますが、今でもコンサルの仕事が楽しくて仕方ありません。ぜひ、学生の皆様にも説明会やインターンに参加頂き、コンサルティングという仕事の楽しさ、学びの大きさ、そしてベインという会社について知っていただけたら嬉しいです。

ベイン・アンド・カンパニー
Bain & Company