【3分で分かる経済のキホン】TPPとは? 面接で聞かれる時事問題対策 part.1

就活の面接では、「自己PR」や「学生時代がんばったこと」、「自分の弱み、強み」など自分の事についてよく聞かれますよね。しかし、「時事問題」についても聞かれることを忘れてはいけません。面接官は時事問題に関する質問を通して、学生が最近の時事問題に関してどのように考え、自分なりの意見を持っているのかということを探るために見ています。こうした質問に対して、どのように対処すれば良いのでしょうか。一番の対処法は自分から興味を持って、ニュースや新聞など色々なメディアをチェックして情報を得ることだと思われます。得た情報について考えて、他人の意見ではなく、自分なりの意見を持つことが必要です。今回ご紹介する時事問題は近年話題になっている「TPP」です。この記事を読んで、一度ゆっくりと考えてみてください。

 

TPPとは

TPPとは環太平洋経済連携協定の略称。TPP協定は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、ベトナムの計12カ国による包括的な経済連携協定です。2015年10月、大筋合意に至っており、各国の議会承認などを経て発効します。これにより、国内総生産(GDP)で世界の4割近くを占め、人口約8億人を抱える巨大な経済圏が誕生します。

引用 : コトバンク(TPPとは)

TPPの目的は、関税を撤廃し、参加国のルールや仕組みの統一です。つまり、TPPにより、太平洋に面している国々で関税(輸入する商品に課せられる税金)を撤廃して自由貿易を実現しようとすることですね。

引用 : TPP政府対策本部-TPPとは-

それでは、日本がTPPに参加するとどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。考えられる代表的なメリット・デメリットを列挙してみました。

 

TPPに参加するメリット・デメリット

メリット

・関税が撤廃され、貿易手続きが簡素化されることで、衣食住に関わる多くの商品が安く購入できるようになります。

・日本の優れた工業製品などを輸出しやすくなり、その結果として、国内の雇用や収入にも好影響が与えられます。

引用 : TPPに関するQ&A

・経済相互依存関係を深めることによってアジア・太平洋地域の安定に寄与することができます。

引用: 安倍内閣総理大臣記者会見

 

デメリット

・食料自給率の低下。海外からの輸入が止まった場合、国内での生活が難しくなることが予想されます。

・TPP参加によって、日本の食品の輸入規制が引き下げられ、安全でない食品が輸入される恐れがある。

引用 : TPPから日本の食と暮らし・いのちを守るネットワーク 考えてみようTPPのこと

・ISD条項(多国間における企業と政府との賠償を求める紛争の方法を定める条項)によって、自分の国にとって不利な判決が出た場合でもそれに必ず従わなければならない。

引用 : コトバンク(ISD条項)

次に、就活に直接関係する代表的な業界のTPPによる動向についても調べてまとめてみました。

 

TPPによってメリットがある業種 

建設
参入障壁が下がり、加盟国政府が発注する公共事業を受注しやすくなります。

空運
商用の入国、滞在手続が簡素化され、ビジネスマンの海外渡米が増えます。

金融
国ごとに厳しい金融規制があるアジア諸国で銀行が支店を進出させやすくなります。

自動車
ベトナムなど乗用車に高い関税をかけている国内向けの輸出競争力が増します。

鉄鋼
顧客の自動車、電機メーカのーの輸出が増え、鉄鋼製品の販売増加に繋がります。

食品
肉や小麦、大麦や果汁などの輸入原料が安く調達できます。

商社
投資規制の縮小により、加盟国のインフラ整備に参入しやすくなります。

引用 : 【時事問題面接対策】TPPについて徹底解説(1)

TPPについてデメリットがある業種

農業・漁業
他国から安い農産物、海産物が大量に輸入されるため、日本の多くの農業・漁業従事者がやめてしまうことが考えられます。

医療・保険
保険適用外の海外からさまざまな医薬品が入ってくるようになります。つまり、お金を払うほどより良い医療が受けられるようになり、1人の医療に格差が生じます。

引用:【時事問題面接対策】TPPについて徹底解説(1)

 

就活生に人気な商社や金融、空運、建設といった業種はTPPによって恩恵を受けるようですね。これらの業種を志望する方は、TPPの影響をそれほど心配せずに、就活に臨めるのではないでしょうか。一方で、農業や漁業、医療、保険といった業種はTPPの影響が及ぶといわれています。農業や漁業、医療や保険といった業種は私たちの日々の生活に密接に関わっています。その点で国民のTPPに対する不安感が高まっていると思われます。

TPPによるメリット・デメリットを理解した上で、現在日本がTPPに対してどのような状況に直面して、今後どのような状況になるのか、考えてみましょう。

 

日本の現状

日本のこれまでのTPPに対する対応を見ていきましょう。

日本はTPP参加をアベノミクス経済発展の起爆剤にしようと考え、2013年にTPP参加方針を表明しました。

メリットでも挙げたように、日本は輸出国ですので、関税が撤廃されると、より多くの製品を輸出することができ、その結果国内GDP(国内総生産)は約4.2兆円増加すると試算されています。

 

一方で、TPPにより他国から安い農産物が輸入され、相対的に値段の高い国産品は売れなくなるといわれています。

現在、日本は海外からの輸入農産物に高い関税をかけています。もし急に関税が撤廃されてしまえば、多くの農産品は壊滅的な状態になるといわれています。そこで日本政府は、日本の農産業を守るため、「米・小麦・乳製品・砂糖・牛豚肉」の5品目は“聖域”として輸入品の関税を撤廃しないことを前提にTPP参加の方針を決めました。

 

そして、日本が参加方針を決めてから約2年後の10月、ついに12か国の間でTPPに対し大筋合意に達しました。

交渉が難航した理由として、どの商品の関税をどのように撤廃するかという論点でアメリカと日本の意見が分かれたそうです。最終的には、日本は「米」を聖域として、アメリカは「自動車」を聖域として認めることで合意しました。

日本の自動車の最大の輸出先であるアメリカは、日本車に対し長期にわたり関税を掛けることになります。但し、日本の米の関税そのものは守られたものの、無関税で輸入できる特別枠が設けられることになっています。

 

一方、日本の輸出を支える工業製品については、

  • 日本を除く11か国全体で99.9%の品目の関税が、TPP発効後30年目までに撤廃
  • TPP協定の発効と同時に、品目数で86.9%、貿易額で76.6%の関税が撤廃

という結果となり、今後ますますの輸出促進が期待されることになりました。
こうした長期の交渉の末、2015年10月、ついに12ヶ国の間でTPPに関し大筋合意に達しました。日本の工業・農業を大きく左右する問題だけに、TPP発効後が気になるところです。

引用 : TPPって何?もう決まったの?日本にとってメリットなの?

 

今後の展望

日本とアメリカで合意が形成されましたが、アメリカの新大統領に選出されたトランプ氏の意向により、再びTPPについて議論が持ち上がりそうです。トランプ氏は、TPPからの脱退を表明し、日本を含む参加国12カ国の発効は見通せなくなりました。TPP脱退を表明するトランプ氏の影響により、日本政府関係者の中には、TPP発効を「困難だろう」と考える人もいるようです。日本を含む各国の承認手続きへの影響も避けられず、早期発効の可能性は極めて低くなり、長期漂流や破綻するとの見通しもあります。トランプ氏の当選により、今後TPPを始めとする世界の経済はどうなるのでしょうか。

引用 : 米TPP離脱へ トランプ勝利

 

トランプ氏の記事はこちら→【3分で分かる経済のキホン 】「トランプ大統領」は日本経済にどのような影響を与えるのか?

 

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回の記事を参考にTPPについて興味を持った方がいてくださったら幸いです。実際の面接でもTPPをはじめとする時事問題に対する意見は聞かれます。先ほども申し上げましたが時事問題についての面接の準備をする際に大切なことは2点あります。1点目は常にニュースに興味を持ち、最低限の知識を入れ、自分なりの意見を持つこと。友人とディスカッションしてみるのもいいかもしれません。そして、2点目は「消費者目線」ではなく「ビジネスマン目線」で考えてみること。今回取り上げたTPPはさまざまな業界のビジネスに影響を与えます。「面接を受ける会社のビジネスとTPPがどう関係してくるのか?」といったところまで掘り下げて考えてみると、面接官からも高評価を得られるのではないでしょうか。