前回は財務諸表の基本知識と学ぶ意義について見ました。今回はP/L(損益計算書)について理解を深めましょう。
P/L(損益計算書)とは何か?
まずP/Lの定義は「企業の一定期間における収益と費用の状態をあらわす表」です。したがって、これはフロー(ある期間にどれだけ増減したか?)の概念です。
会計学における収益という用語の定義に気をつけましょう。主に利益、売上と混同しがちです。
まず利益と収益の関係はRevenue(収益) − Expense(費用) = Profit(利益)となっています。すなわち、収益は「会社のすべての収入」とざっくり捉えてください。そこから、その収入を得るためにかけた額が費用なので、それを差し引くと「会社が儲かった額」すなわち利益となります。
収益
収益は「会社のすべての収入」といいましたが、どのようにして収入は会社に入ってくるでしょうか。
まず売上が思いつくでしょうが、実はそれだけではありません。受け取り利息、受け取り配当金などのチャネルを通じても会社にお金は入ってきます。要するにお金を貸していれば利息をもらえるし、株を所有していれば配当金がもらえます。もちろん、多くの場合は売上が大部分ですが、利息や配当金なども逃さずモレなく把握しましょう。
ちなみに、売上など本業の活動は営業収益、利息や配当金など本業以外の活動は営業外収益と呼ばれ、不動産の売却益などを含む特別収益と合わせて収益を構成する3つの要素となっています。
費用
それでは費用はどうでしょうか?
会社が活動を行うにあたり、どのような支出をしているのかイメージするとわかりやすいと思います。
まずは原価です。たとえば机を作ろうと思ったら木材などの材料やネジなどの部品を購入する必要がありますよね。そしてそれを組み立て管理し販売するために従業員を雇う必要があるし、また部屋や土地を借りたり機械を購入したりそれにかかる税金や水道代光熱費通信費なども払う必要があります。これら社員の給料、賃借料などの会社を経営していくうえでの事業経費を販管費(販売および一般管理費)と呼びます。
そして原価と販管費を合わせて営業費用と言います。ようするに本業を行う上でかかった費用のことですね。もちろん費用はこれだけではありません。そもそも資金はどうやって調達していたかというと、社債や銀行借り入れなど負債を通じて、または株式発行を通じてのどちらかですよね。したがって利息を払う必要があり、為替差損なども含めこれらが営業外費用と呼ばれます。そして、不動産の売却損などを含む特別損失と合わせて費用を構成する3つの要素となっています。収益におけるそれと1対1で対応していますね。(ちなみに、配当金の支払いはP/Lには現れませんが、ここでは説明は省きます。)
利益
前述した関係から、利益=収益 −費用でしたね。
実は利益も、収益・費用のどの部分を使用しているかでさまざまな分類が有ります。
たとえば、売上総利益(粗利益)=売上高 −原価は売上額から原価を引いたもので、付加価値を表しているといえます。企業の提供する商品・サービスの競争力を表す指標として用いられています。
さらにここから販管費を引くと営業利益となり、これは会社の本業によって稼いだ利益ということになります。
経常利益は営業利益に受取利息などの営業外収益を足し、銀行に支払う借入利息などの営業外費用を差し引いたもので、会社の事業全体の利益を表します。本業が順調でも、借入金の返済や利息負担が多いと少なくなります。これは日常的に発生する営業活動と財務活動から生じる収益を表す指標ですので、その企業の本来の実力を計る目安としてよく利用されます。覚えておきましょう。
最後に、当期純利益は経常利益に、本業とは関係のない土地の売買などで発生した特別利益や特別損失を足したり引いたりし、そこからさらに税金を差し引いたものです。臨時の損益を含めた最終的に会社に残るお金を表します。他にもさまざまな利益の分類がありますが、長くなりすぎるのでここでは割愛します。
P/Lはどのように活かせるか?
たとえば、500万円の利益が見込まれる事業であっても、それが売上げ1,000万円の仕事であるのか、売上1億円の仕事であるかによって儲けの割合=収益性が違ってきます。明らかに、後者の場合はコスパが悪いことになり、500万円の利益が出るとしてもやらないほうがいいと判断できるでしょう。収益と利益の関係を本当に理解しているならば、利益だけでなく売上げの金額を答えこの事業のコスパも付け加えて回答するはずです。ここから、経常利益率という指標が使われる理由がわかるでしょう。これは売上に占める経常利益の割合を示しており、企業の本来の収益力を判断する指標として利用されます。率で考えることは重要です。みなさんにわかり易い(?)例を挙げてみます。開成高校は東大合格者数ランキング1位であることが多いですが、これは母数が多いからです。実は灘や筑駒のほうが合格する「確率」は高いのです(※注 筆者は灘でも筑駒でもないです笑)。したがって灘や筑駒の方が、合格力という意味では上なのです。これを会社に置き換えましょう。この経常利益率を同業他社や同企業の過去の実績と比較することで、どれだけ収益率の高い事業を行っているかを判断できますよね。とはいえ、もちろんいくら効率が良くても規模が著しく小さくても問題なので、経常利益の絶対額も見る必要があります。
いかがでしたか?P/Lについて理解すると企業の成績を見て取ることができますね。是非ケース面接やジョブ選考、または株式投資などさまざまな場面で使うことができるので応用してみてください。次回はB/Sについて見ていきましょう。