大石さんはこれまで多様な経験を積み、NTTデータ経営研究所に入社後は異なる分野の知見を活かして、官民の技術戦略を中心に支援しています。連載「コンサルタントの道」第26弾では、大石さんがいかに幅広い知識や経験を自分のものにし、キャリアを広げてきたのか。また、どのように未知の分野の開拓やサービス立ち上げ、事業創出に取り組んでいるのかなどについて、お話を伺いました。 |
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目次
プロフィール
官民双方の技術戦略や技術の社会実装を支援
「積み重ね」の重要性を意識して取り組んだ先に掴んだ、技術戦略の専門性
未知の分野に踏み出す選択が、強みを育む機会に
技術とビジネスをつなぐ要として、企業を支援する役割
グループの強みを結集した、戦略的かつ新しいアプローチ
未知の分野に挑戦し続け、「生き抜く力」を身につける
プロフィール
大石 智史さん
株式会社NTTデータ経営研究所
ソーシャル・デジタル戦略ユニット シニアマネージャー
日系シンクタンク、スタートアップ期のHR系ベンチャー企業のコンサルタントを経て、2017年NTTデータ経営研究所に中途入社。官民双方に対して、技術戦略、組織変革、業務改革を中心とした領域でコンサルティング経験を有する。近年はイノベーションを実現する組織への変革をキーワードに、先端テクノロジーの技術戦略策定や研究開発推進、組織・人材観点での変革に関するコンサルティングに取り組む。
官民双方の技術戦略や技術の社会実装を支援
──大石さんのこれまでのご経歴について、お話しいただけますか。
大石 大学院まで理系の研究をしていたことから、新卒で入社した会社ではその知識を活かせる金融工学の部門にエンジニアとして配属されました。その後、大学時代の同期が立ち上げたベンチャー企業に参画し、人事コンサルタントとして約3年間勤めた後、「人事領域に限定せず、コンサルティングをさらに追求したい」という思いからNTTデータ経営研究所に移りました。
入社当初は前職の経験を活かし、組織変革や業務改革支援などのプロジェクトを担当していましたが、当時ご支援していたクライアントから技術戦略、研究開発支援に関するご相談をいただき、そこからお客様と共にプロジェクトを作り上げる形で少しずつ領域を拡大していきました。現在は技術戦略を一つの強みとしていて、企業の研究開発だけでなく、それを社会実装へとつなげるところまで支援しています。
また、民間の案件だけでなく、国が推進する公共分野の実証事業や政策立案にも携わっています。宇宙に関するプロジェクトやテクノロジーを活用した実証事業など、先進技術をそれぞれのフィールドに持ち込む際に事業化の可能性を検討し、現場で技術がどのように活用できるかを見極めるところなどにも関与しています。
民間企業の場合は、「研究開発した技術が事業に活用できるのかどうか」が焦点になりますが、最先端技術は、まだ世の中が追いついていない技術が大半です。そのような技術は、官公庁が取り組む先進的なプロジェクトの一環として事業化の可能性を探ることもありますし、官公庁の動きと民間企業のニーズの両面を見ながら、技術を社会実装につなげています。
「積み重ね」の重要性を意識して取り組んだ先に掴んだ、技術戦略の専門性
──キャリアを築く上で、どのような経験が役に立ったと感じますか?
大石 大学時代の体育会系ボート部での経験が、私のキャリア構築に大きな影響を与えていると思います。それまで勉強一筋だった初心者が、仲間たちと「日本一を目指そう」と一丸になって活動し、朝は4時半に起きてボートを20キロ漕ぎ、授業を終えてからも再び20キロ漕いで、筋トレをして夜9時半には就寝するという生活を続け、その結果、大学選手権で優勝を争えるまでに成長しました。
理屈では語れないような苦しい経験を重ねる中で、負けず嫌いな性格が形成され、日々の練習を積み重ねる重要性や、地道な努力を重ねればどんな高い目標でも到達できることを学び、社会人になってからも当時の経験を糧に、与えられた目の前の機会に向き合ってきました。自らの知見やケイパビリティが足りていない未知の分野でも1から学び、しっかり取り組むことで「なんとかする力」が養われたように感じます。
特に新しい分野に挑戦し、一定の成果を上げるには、ハードワークをいとわず、キャッチアップに全力を注ぐことが重要です。仕事でもスポーツでも、最初は経験不足を補うための努力は欠かせませんし、それを乗り越えて、自分が資産として活用できる知識やスキルが築き上げられていきます。
コンサルタントには、長期間にわたって地道な努力を積み重ね、どんな状況でも自らの力で自分を引き上げる覚悟と行動が求められますし、この業界に入った当初から、「積み重ね」の重要性を強く意識してきました。そうして、IT、人事、組織変革・業務変革をはじめとする多様な分野での知見が上手く組み合わさり、結果として興味のあった技術戦略に近づいたのだと思います。
未知の分野に踏み出す選択が、強みを育む機会に
──NTTデータ経営研究所で、転機となったプロジェクトがあれば教えてください。
大石 転機となったのは、ゲノム編集技術に関するプロジェクトです。お客様から「このような研究案件は対応できますか?」と声をかけていただきました。当時、私のケイパビリティで対応できるか未知数だったものの、理系のバックグラウンドを活かして挑戦したことで、新たな道が切り拓かれました。
その時は、グループ内でICT技術の活用を進める動きがあったため、ゲノム編集技術だけに注目するのではなく、「バイオインフォマティクスなど新しい領域を取り入れるべきではないか」という示唆を提供することができました。未知の分野への挑戦は不安も伴いますが、それを乗り越えてこそ新しい可能性が生まれるということを、強く実感したプロジェクトです。
それ以降は宇宙開発や防衛関係など、新しい技術やテーマへの挑戦の連続でしたが、もし自分がその選択をしていなければ、現在のように技術戦略を強みとしていなかったかもしれません。未知の分野に踏み出すストレッチな選択が非常に重要だったと感じます。
──NTTデータ経営研究所では、ストレッチな挑戦の機会が多いのでしょうか?
大石 以前は民間の案件のみを手掛けており、私自身も大きな案件を担当していたため、適度に案件をこなすだけであれば新たな展開を模索する必要はありませんでした。しかし、新たな領域へのチャレンジが自身の新しい専門性につながると考え、公共分野への挑戦を始めました。他のユニットと連携して官公庁事業の公募に参加したり、当社では当時あまり経験のなかった防衛関連の案件を獲得したり、いずれのチャレンジもユニットから力強い後押しを受けて取り組むことができました。経営研という会社は、新しい分野への挑戦も前向きに支援してもらえる柔軟な組織だと思います。
異なる強みを持つメンバーと横断的にプロジェクトに取り組む中で、これまで培ってきた技術的な研究開発の知見を活かし、官公庁のニーズと民間の技術を組み合わせることで、新たな価値を提供できるケースが数多くあることが分かりました。それ以来、多様な案件が舞い込むようになり、以前よりも挑戦の機会は増えていると思います。
現在は、「DeepTech」をキーワードに、官民問わず多種多様なコンサルティングテーマを扱っており、ユニットの柔軟なアサイン体制を背景に、様々なバックグラウンドを持つコンサルタントと共に案件をデリバリしています。私の所属するソーシャル・デジタル戦略ユニットは、多数のリーダーが異なる案件を持ち寄るため、テーマや取り組みの選択肢が広く、自由度高く挑戦できるのが特徴で、自分に合った分野や好きな領域を見つけるのに適した環境です。
技術とビジネスをつなぐ要として、企業を支援する役割
──技術戦略に関しては、どのような課題を抱えている企業が多いのでしょうか?
大石 特に多いのは「開発した技術を元に、どのように事業化すればよいか」という、技術起点のご相談です。技術の高度化とサービス形態の多様化が進む中で、企業内でも技術とビジネスの双方を深く理解し、それらをつなぐことができる人材は不足しています。そのため、私たちのようなビジネスの視点と一定の技術的知見を併せ持つコンサルタントが、企画担当や研究者と連携して全体を整理し、事業化を推進していく役割を担っています。
例えば、ChatGPTをはじめとする生成AI関連では、すでに次世代のモデルや性能向上に関する研究が商用化される前段階まで進んでいますが、それを世に出すためには、お客様のニーズに合わせて、商用環境への適応やユーザビリティの向上、UIの工夫など、具体的なビジネスニーズに対応していく必要があります。
また、研究現場では最新のトレンドを把握して研究活動に取り組んでいるものの、研究が社会やビジネスのニーズよりも大きく先行しているケースも多く、ビジネスへの活用を考える段階になって初めて、ビジネスの視点を取り入れる必要性に迫られる場面にも数多く直面します。
こうした状況に対応するため、研究開発の段階からマーケットニーズを把握し、他社との技術面での差異化ポイントを明らかにすることで、商用化に耐え得る技術の実現や、ユーザー視点を取り入れた開発、さらには具体的な事業化プランの策定につながるようなご支援を行い、研究の成果を社会にはやく還元できるように取り組んでいます。
グループの強みを結集した、戦略的かつ新しいアプローチ
──NTTデータ経営研究所の戦略ファームとしての強みや、コンサルティングにおける優位性はどのようなところだと考えていますか?
大石 NTTグループ各社、とくにNTTデータとは密に連携をしており多くの案件をご紹介いただけるため、営業活動ばかりに時間を割く必要はなく、案件のデリバリーや情報発信、インサイトレポートの作成に注力でき、新たなテーマの創出に取り組みやすいというのは一つの強みです。
また、NTTグループは日本を代表する研究機関を擁しており、例えば直近では「IOWN」※ という最先端の光技術を使った技術戦略構想を推進しています。IOWN構想では、光技術を背景に高速低遅延のネットワークや、低消費電力のコンピューティング基盤、最適なICTリソース管理を実現し、持続可能な社会の創出を目指しています。
これに関連して、光電融合デバイス、デジタルツイン、非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network )など、さまざまな研究が進んでおり、グループ横断で協力し、実際にその技術を実証するなどしてナレッジを蓄積しながら、技術力と各事業会社の強みを組み合わせて社会実装に向けた取り組みを加速させています。
さらに、2024年にはNTTグループの研究系企業「NTTアドバンステクノロジ社(NTT-AT)」と当社の協業で、新たに「IPランドスケープ」というサービスを立ち上げました。これは、知財業界では近年注目されているのですが、経営者への有意なインプットとなるように、特許分析を活用しビジネス・技術の両面から調査・分析を行うサービスで、各企業の技術的なポジショニングに対する示唆を導出することを目指しています。
例えば、特許の出願動向をもとに、どの領域に研究開発投資が集中する傾向にあるか、どの技術が他社と競合しないかなどを可視化し、自社と相互補完関係の協業先を探索するといった、特許を起点にした技術戦略の立案を支援しています。このような取り組みを通じて、新しい事業の可能性を開拓する基盤が整いつつあります。
特許分析は非常に難しく、時間もかかるため、効率的に進めるにはどこを重点的に見るべきかを的確に絞り込むことが重要です。当社がビジネス動向を踏まえて絞り込む方向性を示し、それを基にNTT-ATが詳細な特許分析を行うという形で協業を進め、特許分析をビジネス戦略や新規事業の検討プロセスに組み込むことで、より実効性の高い戦略が生まれ、差別化を図れると考えています。
※ IOWN(アイオン)とは、Innovative Optical & Wireless Networkの略で、直訳すると革新的な光およびワイヤレスネットワーク。最先端の光技術を使って、豊かな社会を創るための構想。
未知の分野に挑戦し続け、「生き抜く力」を身につける
──これからの時代に、コンサルタントとして活躍するために必要なことは何でしょうか?
大石 たとえば、衛星に関するプロジェクトでは、通信機器や電源、コンピューティング基盤などの技術要素だけでなく、通信関連法規やプロジェクトマネジメント、目的の軌道に打ち上げるためのロケットの手配といった多岐にわたる知識やスキルが必要です。
このような複雑でスケールの大きな課題に対応するためには、前例がない中で情報を集め、解決策を示すことが求められます。そのため横断的な視点と柔軟性を持ち、全体を見渡しながらプロジェクトを推進していく役割を担い、社会全体をより良い方向へと導くことができる人材こそがコンサルタントであり、コンサルティングの真の価値だと考えています。
また、経営者と戦略的な対話をする上でも、幅広い知識や経験は強みとなります。戦略を描き、変革を実現するためには、新しい技術やテーマをキャッチアップし、全方位的な知識をもとにクロスドメインで新しい価値を生み出す能力や、ユーティリティ性の高い対応力が、これからのコンサルタントには求められるでしょう。
もう一つ重要なのは、どんな状況でも生き抜く力を身につけることです。国に貢献したり、新しいビジネスを創り出したりする挑戦には、泥臭い努力を厭わず、困難を乗り越え続ける強い意志と、日々のたゆまぬ努力が欠かせません。それを理解して、時代の変化に適応するために常に学び続け、他の人にはないバリューを身につけて、困難な状況を乗り越えていくことのできる人が、自分なりの道を切り拓き、活躍できると考えています。
私も多くの方々に助けていただきながら、異なる知識やスキルを組み合わせて新たな価値創出に取り組んだことで道が拓けて、多くのお客様と様々なプロジェクトを手掛けることができるようになりました。
慢心することなく、常に自分の知識の幅を広げ、新しい領域や未知の分野に挑戦し続けていれば、厳しい状況に直面しても、それを乗り越えることができますし、苦しい状況でも諦めずにやり抜く経験が、成長につながります。
困難な課題に挑むチャレンジ精神や高い課題意識を持つ人は、若いうちにさまざまな経験を積んで、スキルや専門性を高め、自分なりの「生き抜く力」を身につけて、ぜひコンサルディングにチャレンジしてもらいたいと思います。
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