ここではA.T.カーニー出身の著名人について紹介します。A.T.カーニーは設立から70年以上経つ老舗のコンサルティングファームであり、日本においてはBCG、マッキンゼーに次ぐ存在感を有しています。今回紹介するのは、印刷業界に革命を起こした会社である「ラクスル」の創業者、松本 恭攝(まつもと やすかね)さんです。
30代の社長である松本さんの経歴は、「将来起業したい!」と考えてコンサルティングファームに入社する人には非常に参考になるものだと思います。
経歴
1984年に富山で生まれた松本さんは、家族も親戚もすべて公務員という環境で過ごします。地元の進学校である高岡高校に進み、慶應義塾大学に入学します。大学では学生団体OVALに参加し、国をまたいだビジネスコンテストを企画します。日本・中国・韓国の学生で行なう
ビジネスコンテストを松本さんは企画しますが、周囲の大学教授やコンサルタントたちからは、そんな企画は不可能だと言われます。それでも実行してみたところ、1年後には中国や韓国に支部ができ、300人規模のビジネスコンテストの立ち上げに成功します。10年経った現在では、このコンテストが多くの学生の人生を変えるほどのイベントとなっています。
大学卒業後は、A.T.カーニーに入社。A.T.カーニーでは、金融機関や物流会社のコスト削減、商社の新規事業立ち上げ、自動車会社・海運会社・保険会社の経営計画策定などに携わっています。朝早く起きて出社し、仕事が終わるのは電車の始発の時間だったといい、1年目からかなりのハードワークを行っていたそうです。
その後A.T.カーニーを退職、ラクスル株式会社を設立します。
A.T.カーニー入社~ラクスル立ち上げ
新卒で入ったA.T.カーニーでは、毎日ハードワークを重ね、体を酷使する日々を送っていたそうです。そのハードワークの中で、「考える力」「気合い」「根性」などの働く上で必要なスキルを一気に身につけたといい、A.T.カーニーでの1年は普通の3年分に相当するといいます。
「印刷業界を変えられる」
あるとき、松本さんは某企業のコスト削減を担当している時に、印刷業界はとてもコスト削減率が高い業界であるということに気づきます。印刷業界の市場規模は6兆円。そのうちの半分は大手がもっており、残りの半分はなんと3万社が食い合っているという状況でした。3万社という数字は明らかに多すぎるものであり、印刷業界は凄まじい供給過多に陥っているのです。松本さんは印刷業界を以下のように分析しました。「この業界は、非常に非効率的だしいびつな形をしている。巨大な業界であるのに、いまだにインターネットが普及しているわけでもない。だったら、インターネットを使えばこの業界に革命を起こせるのではないか?」
A.T.カーニーという大きく成長できる環境に身を置いていたものの、「ゼロから一を生み出す仕事をしたい、事業を創りたい」という思いを強く抱くようになっていた松本さんは、起業をして印刷業界に挑むことを決意します。
急成長を遂げるラクスル
ラクスルはその後、大きな成長を遂げています。2012年にヤフージャパン、ニッセイ・キャピタル、ベンチャーキャピタルであるANRIから2億円以上の資金調達を行い、2013年にラクスルはサービスのリニューアルを行います。2014年にはWiKや伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、ミクシィなどから投資を受け、15億円以上もの資金調達を成功させます。
そして2015年2月、40億円を新たに資金調達しました。もはやラクスルは未上場のIT企業としては最大規模となり、抱える顧客も10万社を超えています。新サービスの「チラシラクスル」を戦略として掲げ、ラクスルは印刷業界に今まさにイノベーションを起こしている最中です。
松本さんは、「たしかにインターネット広告はすごい勢いで進化してきたが、チラシは何十年も進化していない。今の集客ツールにイノベーションを起こしていく。『商売革命』を起こしていきたい」と語っており、日本の印刷業界を活性化させていくことが期待されます。