コンサルティング業界への就職を考える上で不安になるのが
「今後のコンサル業界はどうなるのか」
「コンサル業界に将来性はあるのか」
「未来にはどんな仕事をしていることになるのか」
といったことでしょう。
本コラムではコンサル業界に訪れつつある4つの変化について解説します。
目次
1.海外進出案件の増加
2.ITコンサルの隆盛
3.避けられないコモディティ化
4.ロジカルシンキングからデザインシンキングへ
5.まとめ
海外進出案件の増加
アジアや南米、アフリカなどの新興国の発展
国の産業が発展してGDPが高い国ほど、経済的な発展を遂げている国だといえます。当然ですが、経済が衰退してきている国よりもこれから発展していく国に進出したいと企業は考えます。PwCの調査結果によると、2050年のGDP世界ランキングは、2位インド、4位インドネシア、5位ブラジル、6位メキシコ、9位ナイジェリア(これは予想外でした!)となる見込みです。つまり、21世紀はアジアや南米、アフリカが大きな経済的存在感を示すようになると予想されており、これらの地域への参入を先進国の企業は狙っています。
企業にとって「海外進出」はそう何度も起こるイベントではない
簡単に海外参入を図るとは言うものの、新興国への参入は大きなハードルが存在します。
その国独自の慣習や文化が市場を支配していたり、ある日突然に変わる法規制に振り回されたりなど、参入ノウハウを持たない企業は新興国への進出をしたくても上手く行きません。
そこで、多くの会社のコンサルティングを経験してノウハウを多く溜め込んでいる、コンサルティング会社の出番となります。コンサルティング会社による、企業の海外進出へのコンサルティングは上述の通り大きな需要があるため、コンサルティング会社としても多くの案件を受注することになるでしょう。当たり前ですが、多くの案件を受注できれば、それだけ多くのフィー(=コンサルティング料金)を手に入れられるため、コンサルティング会社は多くの収入を手に入れることになります。
ITコンサルの隆盛
そもそも誰がお客さんになるのか
そもそも、なぜ多くの企業はコンサル会社に自分の会社をコンサルティングしてもらおうと考えるのでしょうか?
経営コンサルティングを企業の経営層が依頼しようと考える時というのは、多くが自社の経営がうまくいっていない時です。
また、将来的には分かりませんが基本的にコンサルティングは非常に高価なサービスであるため、このサービスを利用できるのは資金力のある大企業が中心となります。
つまり、コンサルティングというサービスが提供される場面というのは、「大企業が経営に困っている時」であるといえます。ということは、大企業が経営に困るという場面が多く訪れれば訪れるほど、コンサルティング会社への依頼が増えるということになり、コンサルティング会社の需要は高まるということになります。
大企業は経営に困るのか
それでは、大企業が経営に困る場面が今後は多く発生するのでしょうか?
その答えは「YES」だといえます。
ここ20年ほどで、世界は驚くほど変化しました。誰も携帯電話など持っておらず、自宅にインターネットが繋がっているPCすら無かった時代からわずか20年でスマートフォンが全世界に普及したのです。
そして、1年あたりに発生するイノベーションはどんどん多くなっていき、21世紀は「激動の時代」となると思われます。
これまでは圧倒的な優位を誇っていた大企業も、イノベーションが起きてしまうとその変化に対応していかなければなりません。
しかし、前例がない変化に対していったいどう対応すればよいかが企業には分からないことが多く、外部からの助言を欲します。
そこで登場するのが、変化にどうやって対応すればよいかについてのノウハウを有しているコンサルティング会社です。コンサルティング会社はその会社以外にも多くの会社の事例を経験してきているため、具体的な解決策を提案することができます。
避けられないコモディティ化
近年、ロジカルシンキングに代表されるコンサルタントの技法は書籍などを通じて普及が進み、多くの企業に吸収されています。したがって、コンサルタントに発揮できる固有の能力が失われたのではないか?と推測することもできなくはないでしょう。
しかし数字で見ると、日本では2009年から2014年の間に経営コンサルを利用している企業が3.7倍に増加しているのです。コンサルを営む企業自体も増加傾向で、同期間に1.9倍に増加しています。また売上を見てみても、たとえば三大戦略コンサル(マッキンゼー、ボスコン、ベイン)は2013年の前年比売上成長率が二桁台に乗っています。BIG4についても2010年以降、毎年平均10社以上を買収しており、総売上も成長を続けています。このように、客観的に見て成長している業界といえるでしょう。特に日本は欧米と比べるとまだまだコンサルの利用率が低く、今後成長の余地があるといえます。
では、なぜ成長を続けているのか?さまざまな理由が考えられますが、ここでは2点挙げます。
知っていることとできることとは別
ロジカルシンキングなどの技法が知れ渡ったとして、実際それを何年間にもわたり継続的に使用し鍛えぬける人はやはり少ない、と現役コンサルタントの方は言われます。基本的なやり方を頭で分かっていても実際に使うとなるとできない、という経験はみなさんもあるのではないでしょうか。実践を通じて慣れ、また言語化するのが難しいさまざまな暗黙知(どの部分をどこまで厳密にロジカルに分析するかのバランス能力など)を獲得する必要がある訳で、単純に広まったからコンサルの役目は終わりということはないでしょう。
顧客企業に不足しているスキル
書籍化された技法以外にも、コンサルにはさまざまなスキルがあります。たとえば、業界横断的知見を提供し総合的かつ俯瞰的な視点から助言するというスキルは、さまざまな業界を経験したコンサルならではのスキルです。また、高い調査・分析能力もコンサルならではのスキルでしょう。最近ビッグデータが流行語になっていますが、こうした解析業務もコンサルの腕の見せ所でしょう。さらに、グローバル展開を行う上で語学は必要ですし、ビジネス慣習や法制度など現地の理解も必須です。グローバル化が進む中、こうした面でもコンサルは価値を発揮することができます。
また、ファームごとにさまざまな付加価値を持っています。たとえば、会計系コンサルはめまぐるしく制度や技術が変化しかつ複雑な会計業務に対して強みを持っていますし、IT系コンサルなら新システムの導入など変化が激しいIT技術への専門性を活かしたコンサルティングを行うことができます。
ロジカルシンキングからデザインシンキングへ
昨今、米で巻き起こるデザイン関連会社の買収の動き
・Accentureによる Fjordの買収
・マッキンゼーによるデザインファームとして最古の歴史を誇るLunarの買収
・米金融機関キャピタルワンによるAdaptive Pathの買収
・Facebook によるHot studio の買収
・GoogleによるMike&Maaikeの買収
・IBMはIBMIXを作り、1000人以上を抱えている有数のデザインカンパニーでもある。
電通も広告ビジネスだけではなく、コンサルティング事業を始めるなど、今世界でデザインの認識が劇的に変化してきている。このような潮流を生み出したのは、Apple創業者、スティーブジョブスです。彼は、デザインとは、“「どう見えるか」ではなく、「どう機能するか」”と述べているように、今までのデザインの固定観念を打破しました。これは昨今で一番大きな変化です。
コンサル業界では、どう変わっているのか
一例として紹介したいのは、Accentureの買収騒動に関しての両者のコメントです。
Accenture社でディレクターを務めるバイジュー・シャー氏は、
「クライアントがデジタル企業へ転換するプロセスを後押しするためのものであり、古い仕組みの投入だけでは、持続可能な成果を得ることができないことに、クライアントは気付いている。なぜなら、重要なのはユーザーのエンゲージメントに移行しつつあり、ユーザーエクスペリエンス(UX)が中核になってきているからだ」と述べています。
それに対し、Fjord社オロフ・シベルグソンCEOは、
「デザインはデジタルにおける仕事において、非常に中心的な役割を果たすようになってきた。必要なときだけデザインを依頼するのは、もはや長期的にはうまいやり方ではなくなっている」と述べています。
ロジカルシンキングがいらなくなったという訳では決してありません。
デザインシンキングがビジネスの根幹に関わって来るようになったというのが本質です。
両方の思考方法をうまく組み合わせてビジネスを進める必要性が認知されてきたというのが正しい理解でしょう。
まとめ
コンサルティング業界は長い歴史の中で変化してきました。今や一言で「コンサルティング業界」と言ってもその内訳は実に多様です。
自身のキャリアプランを立てる上で、コンサルティング業界を取り巻く環境の変化や、多様になったコンサルティング業界の種類を十分考慮に入れてみてください。
Q&A一覧はこちら>【Q&A集】コンサル就活の小さな疑問、お答えします。