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「コンサルタントには未来志向で経営をナビゲートしていく力が求められている」。そう話すのは野村総合研究所で、経営DXコンサルティング部の部長を務める阿波村 聡さんです。20年以上のコンサルタントのキャリアの中で、阿波村さんはどのようなことに向き合いながら、挑戦と成長を重ねて仕事に取り組んできたのでしょうか。
連載「コンサルタントの道」第19弾では、阿波村さんの転機となったプロジェクトや、経験や役割によって変化してきたコンサルタントとしての視座、これからの時代に求められる力などについてお話を伺いました。
目次
プロフィール
仕事の幅や時間軸で選んだ、コンサルティング業界
役割に応じて、あくなき高い視座が求められるコンサルタントのキャリア
地道な探求の先に広がる、第一人者への道
競争と共創で磨かれるプロフェッショナルとしての価値
「急がば回れ」で得られるコンサルタントの成長
論理とストーリーで経営をナビゲートする力が求められる時代
プロフィール
阿波村 聡さん
株式会社野村総合研究所
経営DXコンサルティング部 部長 兼 グローバル経営研究室 室長
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻修了後、野村総合研究所のコンサルティング部門に入社。入社後、ハイテク・通信関連業界を中心に、事業戦略立案・新規事業開発、政策提言等のプロジェクトに従事し、ケンブリッジ大学留学(MBA)、本社人事部での人事課長・人事企画課長を経て、現在は経営DXコンサルティング部長を務める。業種を問わず、企業の経営改革や組織・人事改革からイノベーション創出やサステナビリティ経営等のコンサルティングを行うとともに、グローバル経営研究室長として経営や組織に関わる研究・ナビゲーション活動もリードしている。
仕事の幅や時間軸で選んだ、コンサルティング業界
──初めに、阿波村さんがNRIに入社するまでの経緯について教えてください。
大学時代は航空宇宙工学を専攻し、超音速旅客機の流体力学の研究をしていました。当時、エンジニアの道に進むことも考えましたが、世の中ではIT化が急速に進んでいるタイミングであり、日本の製造業を取り巻く環境が目まぐるしく変わりつつある時代でもありました。研究のようにひとつの領域を突き詰めていくことも魅力的ではありましたが、技術だけでなく事業や組織のダイナミズムに広く関わっていきたいと感じていました。
そうした状況から、技術だけではなく幅広い物事をスピーディーに動かしていく仕事をしたいと考えるようになり、メーカーのエンジニアや総合商社と迷った末、コンサルティング業界へ就職することを決めました。様々な社員の話を聞く中で、「5年後の成長した自分の姿」を想像したときに、楽しく働いている姿を直感的に思い描けたというのが、最終的にNRIを選んだ理由です。
気がつけば入社から20年以上が経ち、現在は経営DXコンサルティング部の部長を務めています。具体的には、経営改革や経営管理、長期ビジョンや中期経営計画の策定、人事・組織の改革やサスティナブル経営推進など、業界横断で経営に関わるイシューをコンサルティングする部署を率いており、部署には70名ほどのコンサルタントが所属しています。
役割に応じて、あくなき高い視座が求められるコンサルタントのキャリア
──NRIに入社してから今までのキャリアについて教えてください。
入社後はICT系の部署で通信事業者やメーカー、官公庁のプロジェクトに従事し、事業戦略、新規事業開発、M&A支援、また、官公庁向け政策提言などをおこないキャリアを重ねてきました。あらためて私のキャリアを振り返ってみると、3年ぐらいのスパンでコンサルタントとしての悩みや課題を乗り越えながら成長してきたように思います。
入社当初を振り返ると、日々必死だったことを記憶しています。クライアントとの議論をなかなかリードすることができなかったり、何度繰り返し資料を作り直しても満足いくアウトプットにならなかったりすることも多く、とにかく目の前のプロジェクトで価値を出すことに必死でした。
そんな時期を乗り越えて、3年目くらいからプロジェクトを主導する立場になると、海外拠点と連携しながらICT領域のコンサルティングを推進していく取り組みに加わったり、蓄積した知見を講演や書籍などで対外的に発信したりする機会が増えました。「どうすれば自分自身のコンサルティングの幅を広げることができるのか」ということを考えながら仕事をしていたのがこの時期です。
10年目くらいにはケンブリッジ大学へMBA留学をし、帰国してからは「ICTと他の領域の連携や融合をどのように図っていくべきか」、「クライアントにより高い価値を出していくために、コンサルタントとして関わりをどう広げていくのか」ということを意識しながら仕事をしていました。
同時にグループマネージャーとして、自分のことだけではなく社内のメンバー育成に携わったり、クライアントのアカウントマネジャーを担ったりするなど、さらに高い視座でチームや会社全体のことを考えるミッションを背負うようになったのもこの頃です。
その後、NRI本社の人事部を経て、現在は多くのコンサルタントを抱える組織をマネジメントしているので、コンサルタントとしての視点に加えて、経営視点を持ち合わせながら仕事に取り組んでいます。
地道な探求の先に広がる、第一人者への道
──ご自身のキャリアにおいて、転機となったプロジェクトはありますか?
入社して数年間は自分で納得できるような成果をあげることがなかなかできず、自分が比較的得意とするデータ分析に地道に取り組んで価値を出そうと必死でした。そんな時にプロジェクトリーダーとして通信サービスの価格戦略に携わることになり、それまで培った知見を駆使してプロジェクトに取り組んだ結果、精度の高いシミュレーションなどから的確な提言をまとめることができました。
そのプロジェクトをきっかけに、お客様が「次のプロジェクトも阿波村さんにお願いしたい」と私を指名してくださり、クライアントの他の部署からも相談を持ちかけられるようになりました。その時に、「地道に努力を重ねていれば、成果や成長は非連続に訪れることがある」と実感しましたし、「コンサルタントとしてやっていくことができる」という手応えを得ることができました。これは私のキャリアにおいて転機となったプロジェクトの一つです。
また、今でこそコネクテッドカーや自動運転は当たり前になりつつありますが、入社当初から社内の先輩と一緒に、元々自分が好きだったクルマとICTの融合領域での研究やコンサルティングにも取り組んでいました。初めは世の中の関心は薄かったのですが、徐々に機運が変わってきて、次第にお客様から提案を求められるようになりました。結果として、コネクテッドカーと呼ばれる自動運転にもつながる当時の最先端の分野を、お客様と一緒になって創りあげる経験ができたことは非常に感慨深く思っています。
最先端の分野では、過去に取り組んだ経験のある人材がいないため、若い時から専門家になることができるというメリットがあります。コンサルタントとしてクライアントワークできちんと成果を出しながらも、それと並行して最先端の分野の可能性を見据えて探求を続けていけば、新しい分野において第一人者になれるということを身をもって経験しました。
競争と共創で磨かれるプロフェッショナルとしての価値
──阿波村さんはコンサルタントのキャリアにおいて、どのようなことを意識して仕事をしてこられましたか?
コンサルティングは、コンサルタント自身の成長がダイレクトにお客様への価値提供に結びつく仕事なので、挑戦と成長をし続けることはコンサルタントの使命です。
しかし、ただ漠然とプロジェクトに携わっていれば成長できるというわけではありません。お客様に高い価値を提供するためには、目の前の一つひとつのプロジェクトでプロフェッショナルとして価値を発揮し、そこでの経験や知見を自分なりに昇華させ、さらに他の経験と掛け合わせて、いかに自分ならではのスキルや強みにしていくことができるかが重要です。
また、クライアント企業の経営者が抱える悩みは多種多様です。世の中が速いスピードで変化する中で、コンサルティングファームに求められることも増えているので、自分の知識の範囲内で課題解決に取り組むのではなく、社内外の様々なパートナーを巻き込みながらコンサルティングをしていくことが求められます。
プロフェッショナルと聞くと一人で物事を進めていくイメージがあるかもしれませんが、クライアントに高い付加価値を提供したり、社会に大きなインパクトを与えたりするためには一人で出来ることは限られています。
コンサルタント同士が互いに切磋琢磨し競争しながら自分の専門領域を高めていくことは必要です。同時に、Mutual Respectの精神を持ちながら、周囲のコンサルタントや他の領域の有識者と共創して新しい価値を生み出したり、企業や社会の課題解決に向けた探求をしたりしていくことが、プロフェッショナルとして自分自身の価値を高めることに繋がります。
「急がば回れ」で得られるコンサルタントの成長
——他にもコンサルタントとして成長するために、大切にすべきことがあれば教えてください。
自分の得意な範囲でスマートに仕事をする人は、短期的には順調に階段を登っているように見えますが、新しいことや別の領域に取り組もうとした時に上手く対応できないこともあります。コンサルティングにおける思考の柔軟性や対応力を養うためには、すぐ答えを探すのではなく、回り道をすることも必要だと思います。
コンサルタントにとっての「回り道」とは、とにかく悩んで考えることです。表面的なアウトプットは同じだったとしても、ひたすらに悩んで考えた過程がクライアントへの提案の深みとして表れます。クライアントから質問や意見をいただいた時にも、自分が悩んで考えた範囲が広く深いほど、色々な観点から議論をすることができ、何か指摘された際にも何が問題であったかを適切に把握することができるでしょう。
回り道をすることは非効率に思えるかもしれませんが、コンサルタントとして成長するためには必ずしも無駄ではないですし、物事を考えたり、人と議論したりしながらそれを発展させることが好きな人がコンサルタントに向いています。様々な領域やテーマのプロジェクトで悩んで考えることが自分の血肉になり、中長期的なコンサルタントとしての成長に確実につながるのだと思います。
論理とストーリーで経営をナビゲートする力が求められる時代
——今後、コンサルタントにはどのようなことが求められるようになっていくのでしょうか?
私は業界横断で経営や組織の変革に携わっていますが、もはや論理やデータだけで企業に意思決定を促すのは難しい時代です。コンサルティングの土台となる論理構造がきちんと成り立っていることやDX等の適用を最大限していくことは大前提ですが、売上や収益という観点だけではなく、社会における存在意義やサステナビリティ、組織と従業員との関係などに企業としてどう向き合っていくべきかといった「ストーリー」、つまり右脳的な観点も含め、未来志向で経営をナビゲートしていく力がコンサルタントに求められています。
最近は数年先でさえ見通すことが難しい世の中なので、クライアントの経営陣と議論を重ねながら、自分達の存在意義を再確認しつつ、10年後のありたい姿を描き、そこに向けてどう取り組んでいけば良いかを定めていく長期ビジョンの策定や、それを従業員が腹落ちするように共感を生み出していくような案件が増えています。そうしたことからも論理に加えて共感力や人間力を織り交ぜながら、経営や組織変革を推し進めていけるコンサルタントがより必要とされていくでしょう。
——最後に、これからコンサルタントを目指す学生の皆さんに伝えたいことはありますか?
コンサルタントの成長には回り道が不可欠だとお話ししましたが、そのためには多角的に物事を考える癖を身につけておくことが大事です。知的好奇心に従って色々な情報を得たり、人と議論をしながらも、答えを誰かに教えてもらうのではなく、様々なことを考えたり悩んだりしながら、自ら答えを導き出すというマインドを持ち合わせていて欲しいと思います。
また、自分が任された仕事に対して精一杯向き合うことを心地よいと思える人はコンサルタントに向いています。学生の皆さんにおいては、自分がやりたいと思うことに対して一生懸命打ち込んでみる、という体験は大事だと思います。その経験を通じて得意不得意や性格など、自分のことをよく知る機会になるでしょう。
大変なこともありますが、常に新鮮な気持ちでワクワクしながら仕事ができるのがコンサルタントという職業です。私も20年間、一度も飽きることなく楽しみながら仕事をしてきましたし、これからもたゆまない挑戦と課題解決を追求し続けていける仲間と共に価値を創出していきたいと思います。