sponsored by ボストン コンサルティング グループ
現役コンサルタントに仕事への思いをうかがう連載「コンサルタントの道」、第5弾には、ボストン コンサルティング グループ(以下BCG)のパートナーを務める荻原英吾さんが登場します。事業会社でも自ら海外進出を成功させ、コンサルタントとしても数多くの日本企業の海外進出を支援している荻原さん。その原動力は何か、そして、目まぐるしく変化する社会を勝ち抜くコンサルタントとはどのようなものか。業界を牽引するBCGのパートナーだからこそ語ることができる信念に迫ります。
目次
プロフィール
「日本の産業・経済を強くしたい」思いを持ってコンサルへ
プロジェクト数が圧倒的に多いBCGだからこそ身に付く高い専門性
新型コロナによる変化は新たな機会。変わりゆくクライアントのニーズに応える
デジタルもグローバルアセットも最大限活用するプロジェクト
1人ひとりが強みに特化し、“Best of BCG”を提供する
強みや価値観、経験のダイバーシティがBCGを強くする
プロフィール
荻原 英吾(おぎわら えいご)さん
ボストン コンサルティング グループ
Managing Director & Partner
一橋大学経済学部卒業、英マンチェスター大学経営大学院修士。
みずほコーポレート銀行(当時)、A.T. カーニー、日清食品ホールディングス株式会社を経て、2018年にボストン コンサルティング グループ(以下BCG)に入社。日清食品ホールディングスでは経営企画部長、日清シンガポール社長/アジア総代表などを務めた。 BCG消費財・流通・運輸グループ、マーケティング・営業・プライシンググループ、グローバル化戦略のコア・メンバー。消費財、ファッション等の業界に対し、マーケティング・営業戦略、新興国を含む海外進出戦略、新規事業、デジタル・トランスフォーメーション、M&Aによる事業拡大などのプロジェクトを手掛けている。
「日本の産業・経済を強くしたい」思いを持ってコンサルへ
——現在のお仕事について簡単に教えてください。
今の役職はManaging Director & Partnerで、業界で言うと消費財(飲料・食品、化粧品、日用品、ファッションなど)、機能で言うとマーケティングや海外戦略を専門領域として担当しています。併せて、BCG Japanの新卒採用の責任者でもあります。
——コンサルタントを目指したきっかけはなんですか?
コンサルタントに限らず、今までのキャリアは全て、日本の産業・経済を強くしたいという思いから選択してきました。
新卒では銀行に就職し4年ほど勤めました。失われた10年と言われ、世界市場における日本のプレゼンスが落ちていった不景気の時代でして、将来、日本が海外の人から「極東にこんな小さな島国があったなんて知らなかった」と言われないように、自分たちが産業と経済を支えなくてはいけないという想いで金融を選びました。ただ、銀行は困っている企業に資金を融資する、例えるなら血液を送ることはできますが、お金を貸した後に、その企業がどのように戦略を立て、どのように成長すべきかを支援する能力がなく、深く携わることもできないと気づきました。入社後数年経つうちに、このまま銀行にいても本当の意味で日本を強くすることはできないと考えるようになりました。 そこで本当に産業・経済を強くできるのはどこかと考えたときに、たどりついたのが戦略コンサルティングファームです。日本の経済は企業活動の集合体なので、1つ1つの企業が本当に強くなることが、経済を強くすることにつながると思い、それができる業界はどこかと考えた結果でした。
——新卒の頃から、日本の産業・経済を強くしたいという考えを持っていたのはなぜですか?
自分の周りに自営業が多く、経済が生活に与える影響の大きさを身をもって感じてきたからですかね。母も父も親戚もそれぞれ自分でビジネスをしていて、景気が良くなると事業もうまくいって家の車が新しくなったりテレビが大きくなったりするのを見てきました。逆に景気が悪くなると家のなかでも後ろ向きの会話が増える。経済環境がこれだけ人々や社会に影響を与えるんだと実体験として感じていました。日本の産業・経済をグローバルの中で強くしていくことが今後の日本のプレゼンスにとっても大切であるという想いはここから来ていると思います。
——実際コンサルティングファームに入社してみてどうでしたか?
すべての企業の業績を同時に引き上げることはなかなか難しいことですが、とある企業の戦略をお手伝いして、その企業が成長することを通して日本の産業を強くすることに貢献できたと感じましたね。当時は日本の自動車メーカーや電機メーカーが積極的に海外に進出し、技術力やデザインが評価されたことで売上が上がり、社員の給料も上がって、その攻めの姿勢が他の日本企業を勇気づけた時代でした。実はその後ろではコンサルティングファームが海外進出戦略のお手伝いをしていて、日本が持つ優れたコンテンツや特別な技術を海外でも展開するサポートをすることで、フラッグシップ企業を創出し、それが他の企業や産業界を勇気づけることにも繋げられたという実感はありました。
——次に事業会社へと転職されたのは、どういった理由からだったのでしょうか?
A.T. カーニーに勤めていたときに、日清食品ホールディングスの経営陣とお会いする機会がたまたまあって、色々将来の戦略を議論するなかでお誘いのお話をいただき、参画を決めました。自分のライフワークである、日本のコンテンツと技術を世界に発信し、日本の産業・経済を強くすることが、その環境でより加速化できると思ったからです。日清食品は即席麺を世界で初めて作った会社で、日本では大きなシェアがある一方で、世界で見るとシェアが1%程度と低かった。「日清の技術力は本当に素晴らしいのに、シェアがたった1%だなんて、もっとできることが日本の企業としてあるのではないか?」とお伝えしたところ、「だったらうちに来てやってよ」と言われました。日清食品なら日本の強みを世界に発信することができ、ライフワークを実現できるような環境だと考え、入社を決意しました。
日清食品ホールディングスでは、実際に事業を動かすことの面白さと同時に難しさも感じました。コンサルティングファームもインプリメンテーション(*1)までご支援していますが、とはいえ最後は第三者の域を出ません。一方、事業会社では、どういう状況でもどんなに外部環境が悪くても、最終的な責任を負わなければならない。例えば昨今で言えば、新型コロナウイルスの影響で売上が落ちてしまった企業の経営者も、株主に対し「新型コロナウイルスが悪いのであって、自分は悪くありません」と言い訳はできません。そういった厳しさと難しさを肌で感じました。
また、人に動いてもらうことの重要性を痛感しました。私が社長を務めていた日清食品のアジア事業は工場や営業も含めるとスタッフが千名以上おり、その中で自分1人が手を動かしてできることには限界があります。コンサルティングファームだと1チーム5人程なので、自分1人が与える影響力はとても大きいのですが、大規模な事業会社ではそうはいきません。だから、どうすれば社員一人ひとりに『日清のため、社長のために動こう』と思ってもらえるかを考えることが重要でした。
*1 インプリメンテーション:実施、実行支援を意味する
プロジェクト数が圧倒的に多いBCGだからこそ身に付く高い専門性
——事業会社からコンサルティング業界に戻ったのはなぜだったのでしょうか。
事業会社は責任もありビジネスとしても面白く、学ぶことも多かったのですが、一方、経営における最先端の課題や、最新のアプローチに触れ続けることが難しいと感じ始めました。このため、全社の戦略を立案し、その成果を日清食品アジアの社長として実現し、取り組みが一巡したと感じたところで、コンサルティング業界に戻ることを決めました。本当の一流の企業を創るためには、最先端の事例や課題、ノウハウを理解したうえで経営の能力と合わせて対処していく必要があります。これだけ速く環境が移り変わる中で、世の中の変化に対応するには、最先端の経営手法を理解しながら会社を変革していかなければならず、それができるのはやはり多くの企業やトピックスと関わることができるコンサルティング業界だと考えました。
——コンサルティングファームの中でBCGを選んだのはなぜですか。
日本においてBCGの規模とプロジェクト数は圧倒的で、私のライフワークでもある日本発海外の案件を通じて日本を強くしていくことをやるならBCGしかないと考えたからです。まず日本のトップ企業の多くはBCGのクライアントです。そして、BCGは、社員数が日本だけで約850名と規模が大きくプロジェクト数も多いので、その中から自分の興味のある分野や専門性を磨けるプロジェクトを希望して選ぶことができます。BCGは、専門性が高い人たちが集まってコラボレーションすることで価値を出すモデルで成長していますが、これはある程度の規模がないと実現できないビジネスモデルです。
実際、プロジェクトにアサインされるタイミングで、新しく始まるプロジェクトが例えば15-20ケースといった規模であるので、BCGのコンサルタントは、その中から「この業界に携わりたい」、「このトピックスに触れたい」という基準でプロジェクトを選ぶことができます。規模が小さいファームでは、そのときに始まるプロジェクトが2、3ケースと選択肢が少ないため、選ぶ余地がなく偏ったプロジェクト経験ばかりになり、結局ジェネラリストになる傾向が強いのではと思います。
私は、コンサルタントはジェネラリストになるのではなく、専門性を身に付けるべきだと考えています。コンサルティングの手法に関する本が多く出版され、誰でもある程度のロジカルシンキングは身に付けることができる今、コンサルティングのスキルはコモディティ化しつつあります。汎用性のあるコンサルティングスキルの磨き込みはもちろん必要ですが、それだけでは十分ではなく、専門性を掛け合わせていかなければならなくなっています。
新型コロナによる変化は新たな機会。
変わりゆくクライアントのニーズに応える
——新型コロナウイルス感染拡大によって、コンサルティングファームはどのように影響を受けると思いますか?
まず、取り組むテーマが変わってきていますね。今まで企業が立案・遂行してきた事業戦略だけでなく、場合によっては今後十年をかけて実現しようとしていた将来の目標がこの1年で役に立たなくなる事態すら起こる様になってしまいました。例えば、レストランに商品を卸していた業務用食品メーカーは、在宅勤務の増加やライフスタイルの変化によって、レストランから長期的に人々の足が遠のく一方、テイクアウトやデリバリーの急速な台頭もあり、環境の急激な変化に合わせた戦略の変更が求められています。教育サービスも紙からデジタルに急速にシフトが進んでおり、新型コロナウイルスが落ち着いたとしてもその便利さに気づいた生活者は元に戻ることはないでしょう。このような状況下では、企業はこれまでの大方針を見直す必要があり、ゼロから戦略やビジョンを再検討する案件が増えています。
またデジタル領域でもテーマは明らかに変わっていて、BCGは既にそこも取り込んでいます。従来はプロセスやオペレーションの効率化のためにデジタルを活用するという案件が多かったのですが、現在ではデジタルを活用して顧客への提供価値をいかに向上させるかという案件に変わってきています。例えばある教育企業は、過去に中心だった紙と物理的な教材のビジネスモデルを捨て、顧客のニーズを踏まえながらAIと対話して学ぶ仕組みを提供するなど、新たなビジネスモデルの創出を目指しています。
BCGは2018年にDigital BCGという組織を立ち上げましたが、現在、グローバルで見ると実はGoogle、Facebookに次いで世界で3番目にデータサイエンティストが多い企業になりました。ただBCGは、デジタルを経営戦略を実現するツールとして活用しており、ITベンダーのようにパッケージやシステムとしての販売はしていません。戦略コンサルティングファームのなかでこれほどデジタルに強いファームは他にはありませんし、従来のITコンサルティングファームとはアプローチが異なるという点でBCGならではの価値を提供できており、クライアントからも高く評価をいただいています。
新型コロナウイルスの出現は間違いなく人類にとっての脅威ですが、別の見方をすると、新卒で入社したコンサルタントにとっては、ある意味では機会と捉えることもできるのではないでしょうか。ビジネスモデルがこれまでと大きく変わらなくてはいけない中で、新卒のコンサルタントは新しいビジネスモデルをまっさらな状態で考えることができるからです。既存のコンサルタントはこれまでの知見をアンラーニングする必要が出てきますが、新卒はその必要がありません。正しいロジックで組み上げられたアイデアをもとに、自由で柔軟な発想で「我々デジタルネイティブ世代はこうあるべきだと考えます」と無邪気に提言し、それを既存のコンサルタントに対する強みにすることすらできる可能性があります。
少し話が変わりますが、アメリカや欧州など海外の主要市場と比較したときに、日本のコンサルティング業界は、経済規模に対して小さすぎると考えています。ですから、本当はMBB(*2)で小さいパイの取り合いをしている場合ではなく、日本のコンサルティング業界を互いに協力してあるべき姿まで発展させていくべきです。海外企業のプロ経営者は、経営自体が専門領域だと考えていることに加え、自分の業界だけでなく他業界のベストプラクティスからも学んで戦略を構築する重要性を理解しているため、外部リソースとしてコンサルティングファームをうまく活用しています。日本の経営者にも、同じ業界や社内の考え、価値観に閉じることなく、外部のベストプラクティスやノウハウを取り入れることで、化学反応が起き、新しく非連続的な戦略を生み出すことができることをさらに理解してもらえればと思っています。コンサルティングファームが場合によっては協力して日本企業の国際競争力を高めていかなければならないですね。
*2 MBB:外資系戦略コンサルティングファームのトップである、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループ(BCG)、ベイン・アンド・カンパニーの3社の頭文字を取った略称
デジタルもグローバルアセットも最大限活用するプロジェクト
——次に、過去に取り組んだプロジェクトについて具体的に教えていただけますか。
ファッション企業のデジタル化についてのプロジェクトを1つ紹介しますね。ファッション業界は四半期ごとに新しく新商品を発売するのですが、トレンドが目まぐるしく変わるため売上予測が難しく、シーズンが始まってすぐに売り切れることもあれば、逆に売れ残ってしまい最終的に値引きし、それでも売れ残れば廃棄しなければならないという課題がありました。需要をどのように予測し、マーケティングや販売に落とし込むか、悩んでいる企業は多くあります。
そこで、BCGは、Digital BCGのエキスパートとコンサルタントとで混成チームを作り、戦略策定に取り組みました。Digital BCGはAIなどの仕組みを作り、新しく作る洋服がどれくらい売れるかを予測します。色や形、サイズ、そしてその洋服がトレンドの影響を受けるものか否か、また、その年の気温など様々な要素を特徴量として読み込み、機械学習で予測する仕組みを作りました。一方でコンサルタントは、そのAIに対して、どのタイミングでどういう情報を読み込ませれば予測の正確性が高まるのか、さらには予測を元にしたプロモーションや店頭での陳列方法など、クライアントと議論しながら利益を最大化する戦略を提案しました。
ただ、やはりAIが万能というわけではありません。そのため実際の販売量が予測とある程度ズレることを前提として、より損失が小さくなるようなズレ方になるように、ビジネスサイドから働きかけます。具体的には、予測が多すぎた場合は最後に原価程度までの値引きをして利益が出ないのに対して、予測が少なすぎる場合、売れたはずなのに売ることができなかった分の機会損失額が非常に大きいことが分かりました。その点を把握して留意するかたちでの予測プロセスを構築し、全社の生産・販売の事業計画の仕組みの中にAIを組み込んでいきました。
ちなみに、他社では需要予測のAIを作り、パッケージ売りをすることもあるようですが、BCGが提供するのはあくまでも戦略であり、デジタルは提供する戦略の一部に組み込まれているに過ぎません。
プロジェクトの期間に関しては、売上予測の仕組みを作るのに3ヶ月、実行・マーケティングの戦略を策定するのに半年程度かけました。最近は期間が長いプロジェクトが増えており、その背景には市場の不確実性が高まっている中でアジャイルに見直しをかけながら進めていくプロジェクトが増えていることがあります。戦略を構築し実行まで漕ぎつけたとしても、昨今ではすぐに状況が変わってしまい、次の1ヶ月でまた作り直していかなければならないこともあります。現状に即したアジャストメントがないと戦略として成り立たない時代になっています。
——ご自身のライフワークである、日本発海外のプロジェクトについてもご紹介いただけますか。
日本発海外で言うと、ある化粧品メーカーの海外進出プロジェクトを担当したことがあります。業界問わず、グローバル企業にとっては非常に悩ましい問題である、グローバル市場における製品ポートフォリオを作ることに取り組みました。
化粧品の場合、市場の特性やエスニシティ(*3)によって、ニーズが大きく異なっていきます。例えば、ポイントメイクアップは、はっきりとしたメイクを好むアメリカやイギリスなどでニーズが高く、スキンケアはアジアやイタリア・ドイツでよく売れます。フレグランス製品がよく売れる地域としてはまずヨーロッパが挙げられますし、黒人の方が多い国だと、日本人が肌を白くするように、肌を健康的な輝きを持った色味にするブロンザーが売れます。各国で様々な成長機会がある一方でリソースは有限ですから、ターゲットと商品のポートフォリオを適切に決めることは重要であるとともに、極めて難しい意思決定となります。
ターゲットを決める際、まずその企業のブランドが候補の国や地域でどの程度、またどのように認知されているかを調べます。例えば、その国の消費者からは日本企業のスキンケア製品に対するブランドイメージと評価が高いことや、アメリカではブランドポジショニングの近い韓国メーカーが進出しているため競争が厳しいことなどを考慮に入れます。国・地域によってマーケットや競合の在り方が全く異なるのです。グローバルポートフォリオを作るときに、その国の消費者の嗜好と自社の強みがどのようにマッチングできるのかを捉えながら優先順位をつけていく必要があります。
また、環境の変化を加味することも重要です。たとえば、アメリカと中国の間で緊張関係が続いていて輸出入にも影響が出ているとか、新型コロナウイルスの影響でマスクを着用するようになったため、リップ、チークは売れないがアイメイクやヘアケアはより売れるようになっているといったことも考慮しなければなりません。
さらには市場を絞り込む上で、カスタマージャーニーも見ていくことになります。1人の消費者がどのオケージョンで化粧品を使うのか、具体的にはあるリップは朝に家で使うけれど、別のリップはポーチに入れて持ち歩きメイク直しに使うだろう、などとオケージョン毎のニーズとそこで提供するべき価値を考えていきます。Demand Centric Growthと呼んでいますが、1人の消費者を起点にカスタマージャーニーを描いて、そこに対して商品を当てはめていき、トータルのシェアを見ていく手法です。現地に行き調査・インタビューをしながら、明らかにしていくことになりますが、日本人だけだと分からない部分も多いので、必ず現地のコンサルタントも入り、現地のインサイトを得ながら調査していくことになります。
*3 エスニシティ :文化・民族的な特徴を指す
——そのプロジェクトでは、海外のコンサルタントも参加したとのことですが、何名のどのようなチーム構成だったのでしょうか?
日本では4、5人のチームが組まれ、プロジェクトをメインで推進していきます。海外には、地域を絞り込む前の段階では1ヶ国数人ずつ計5ヶ国程度プロジェクトに参加してもらい、グローバル全体で総勢20人くらいのチームとなっていました。
それ以外にもナレッジチームと言ってデータを集めて分析する人や、特定のトピックについてアドバイザリーで入る専門家もプロジェクトに関わります。全て合わせると、関わっている人の数はかなり多くなりますね。
BCGには全世界で約3万人のスタッフがいる中で、日本は850人しかいないので、最先端の知見は海外から得ることも多く、BCG全体のノウハウをどうレバレッジするかが大切です。 そのため、やはり一定の英語力が必須になってきます。就活生の中では過去“BCGでは英語が必要ない”と言われていたこともあると聞いていますが、それは誤りです。日本だけでは完結しない、海外に出ていかなければならない環境になっていますからね。専門家が多くいる海外の約3万人とコミュニケーションをとれないと、BCGの持つ強み・ノウハウを活かせませんし、たとえ国内のプロジェクトでもバリューを発揮できません。
1人ひとりが強みに特化し、“Best of BCG”を提供する
——改めてBCGの特長、他社との違いを教えてください。
会社として規模が大きくプロジェクト数が多い、結果として専門性を磨ける、という点はこれまでお話ししてきた通りですが、だからこそBCGは他社に比べて組織力が高いと思います。BCGでは、パートナーそれぞれが個人事業主として活動するというより、”Best of BCG”を提供するために体系立って動くことが多く、パートナー間で連携してそれぞれの強みを持ち寄ったり、案件にあったコンサルタントをアサインしたりします。クライアントとの関係性は個人のパートナーが維持することが多いですが、クライアント自体はBCG全体のクライアントで、全社で協力してベストな価値を提供すべきという考え方が根底にあります。社内での連携が重要となるため、お互いをよく知り、連携できるカルチャーづくりを大事にしています。
また、BCGでは人材を健全に活用・育成するため、育成方法やワークライフバランスなどの組織ルールも整備されています。
例えば、プロジェクトに関する匿名のアンケートを週次で実施していて、プロジェクトの内容に関する「クライアントに貢献できているか」、「プロジェクトは自身の成長にプラスになっているか」などの質問に加え、「休日働いていないか」や「〇時を超えて働いた日はないか」、「今の働き方はサステイナブルであるか」など、ワークライフバランスに関する質問も行います。そのアンケートにおいて、「サステイナブルではない」と答えたメンバーがいた場合、担当パートナーがプロジェクトリーダーに改善を求めます。それでも改善されない場合は、プロジェクトリーダーを変えることもあります。
それは、BCGにとって、コンサルタントたちは会社の持つ貴重なアセットであり、それを1人のマネージャーの運営管理能力の不足で棄損することは許されないと考えているからです。 人によってはやや堅苦しく感じるかもしれませんが、企業の成長戦略としては正しく健全であると思います。入社した人が辞めずに、いかに気持ちよく長く働き続けられるかを大事にしています。
——BCGでコンサルタントとして成長するために必要なことはなんでしょうか?
強みに特化することです。すべての能力を平均的に伸ばす必要はなくて、強みを伸ばし、弱みはチーム・組織全体で補えばよいと考えています。これは、先程も触れましたが規模があるからできることで、強い専門性を育てることにつながっています。 BCGでは、強みをどのようなプロセスで磨いていくかを大事にしているため、アサインするプロジェクトも、戦略重視のものや数値分析に比重をおいたものなど、入社当初は色々な種類を経験できるように考えています。その中でプロジェクトリーダーはその人の尖っている部分を見つけて、本人との面談の中で専門性として伸ばしていくことを提案します。その際、本人にとって伸ばしたい強みであるか、モチベーションを持てるかを必ず確認しています。強みとやりたいことが一致していたら、そこで強みと専門性を伸ばせるようにどんどんプロジェクトに入ってもらいます。もちろん入社してすぐに専門性が必要なわけではありませんが、プロジェクトのアサインメントはリーダーとメンバーの両者の希望でマッチングするので、年次が上がっても強みがあまり際立っていない状態だとアサインされづらくなります。このため、数年のうちに専門性を持つことは重要ですね。
強みや価値観、経験のダイバーシティがBCGを強くする
——BCG Globalのパーパスとして掲げる“Unlock the potential”についてお話しいただけますか?
“Unlock the potential of those who advance the world.” これがBCGの存在意義です。直訳すると、世界をリードする人々の可能性を解き放つ・開花させるといった意味合いです。
BCGでの“Unlock the potential”には2つの側面があります。1つ目は、クライアントが新たな能力を身に付ける“エネイブルメント(enablement)”で、クライアントが新たな強みを構築したり、これまでとは違う視座を持てるようになったり、と新たな能力を開花させていくことを指します。今日のように非連続な環境では、クライアントは自分たちが何者であるか、自分たちは何ができるのか、をもう一度考え直すことになります。BCGは、クライアントの中にあるはずのポテンシャルを十分に発揮させられるようなパートナーになっていきたいと考えています。
2つ目は、BCGに参画している人たちのポテンシャルを花開かせるという意味です。BCGの社員自身が能力とスキルを伸ばし、新しいことができるようになる、尖っている部分が更に尖るといったことですね。BCGは才能の宝庫で、いろんな才能の持ち主が活躍しています。
1つ目のクライアントのポテンシャルの解放を実現するためにも、BCG社員一人ひとりの持つ才能をできるだけ大きく開花させる必要がある、”Unlock the potential”はそういった両面を包含するメッセージだととらえています。
——BCGを志望する学生にメッセージをお願いします。
非連続な市場環境において個人だけで価値を出すのはさらに難しくなっており、多様性ある人が集まり、ダイバーシティのなかで価値を創造することがより重要になってきています。これまでの経験をもとにクライアントやBCGのチームに新しい視点を提供できる独自のモノの見方や価値観を持っている人、新しいものを生み出す意欲の高い人にぜひ入社してほしいと思います。それぞれの強みと専門性を組み合わせて価値を提供することが求められる環境になってきている中で、自分の強みや特徴がどこにあるかを理解していることが非常に重要です。
昨今、クライアントからの問いも非常に難しくなってきています。我々のコンサルティングは、立案した戦略をクライアントが実行し、それが自分たちでできるようになるところまで支援しますから、次に投げかけられる問いはさらに難しくなります。また、誰も経験したことのない市場環境を前に、単純に過去の知識や経験の蓄積だけでは答えを出せなくなっています。
そのような難しい課題に対して、どんなに優秀なコンサルタントでも1人で答えを出すことは不可能であり、だからこそ組織としてのダイバーシティの力が必要になります。単純な性別や国籍のダイバーシティだけでなく、強みや価値観のダイバーシティが必要です。価値観がぶつかり合わないと予定調和になってしまうので新しいものは生まれません。価値観やパーソナリティは各個人のバックグラウンドと経験から培われるものなので、違う価値観を持っている、ということは、すなわち他の人とは違った固有の経験をしている、ということになります。ですので、どれだけ自分ならではの経験をしてきているか、どれだけ1つのことを突き詰めたり、打ち込んだりしてきているかを重視するようにしていますね。多様な価値観を持つ人たちが集まることで、BCGが強いファームであり続けられると考えています。様々な価値観を持った皆さんとお会いできることを楽しみにしています。一緒に日本社会の発展に貢献しましょう。