【外銀・外コン志望者必見!】企業分析入門その④ ~C/F編~

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前回はB/Sについて理解を深めました。今回はC/F(キャッシュフロー計算書)について見ていきましょう。

C/Fとは何か?

まずC/F(キャッシュフロー計算書)の定義は「実際の現金の流出入をあらわす表」です。一見すると、だったらP/LとかB/Sを見ればいいじゃないか?と思ってしまいますが、なぜC/Fが必要なのでしょうか?実は、キャッシュフロー計算書は現金の流出入金額そのものを見ていますが、P/LやB/Sは実際に動いた金額ではなく一定のルールにもとづいて評価された企業の利益(成果)を表しているのです。と言われてもまだ良くわからないでしょうから、まず会計におけるルールの種類(現金主義・実現主義・発生主義)について理解しましょう。

そもそもなぜ異なるルールが必要なのか?それは、会計期間は一年ですが、この期間内の現金の流出入だけを見るとさまざまな不都合が生じるからです。たとえば30年間使える工場の建設費用1000億円を一括で払うとして、そのまますべてその期に1000億を費用として計上するとその期は大赤字になってしまいます。そして、その次の年からは工場の維持費以外何もないので、大きな利益が出てしまいます。まるで、工場を立てた年に著しく業績が悪化したように見えてしまい、P/Lの本来の役目(企業の成果はどんな感じかな?)が分かりづらくなります。この場合は減価償却という考え方が用いられ、30年間使えるなら費用を30で割って各期に割り振るのです(これは実際に分割払いにして30年間少しづつ返しているということではないことに注意。実際は最初の期で一括で払っていてもそのように計上されるのです)。他にももっとわかりやすい例で言えば、たとえば、売り上げは売掛金(商品を送りますが、代金支払いは後でいいですよ、という意味)などのように、物品は納品済みだが入金がまだされていないという状況ということもあります。この場合は実際にお金をまだ受け取っていなくても、納品済みで後は入金を待つのみですから、成果としては計上してもよいと考えられるでしょう。

 

サラリーマンの一カ月の生活を例にしてP/LとC/Fの違いを説明している記事があるので、余裕があればこれを見てみてください。(この記事で出てくる買掛金とは、お金は後で払うので商品を先にくださいという意味)

以上、実際のお金の動きとP/L・B/Sの値は乖離しているということを説明しました。会計用語としての「利益」は一定のルールに基づいて行われた企業成績の評価であり、キャッシュフローは事実としてどれくらいお金が出たり入ったりしたかを表しているのです。

 

なぜキャッシュフロー計算書が必要なのか?

上で見たように、商品やサービスの提供とその売上代金の回収には時間差があります。つまり、どんなにたくさんの売上をあげても、その回収に長い時間がかかって手元のキャッシュが増加しなければ、借入金を返済したり、商品の仕入代金を支払うためにまた資金を借り入れなくてはならず、会社の資金繰りは苦しくなります。キャッシュフロー計算書からはこのような危険を読み取ることができるのです。黒字倒産という言葉を聞いたことがあるでしょうか?意外とこういう事例は少なくないのです(詳しくは黒字倒産について紹介しているこちらの記事をどうぞ)。

これは一例に過ぎません。会計のルールにしたがって作成された損益計算書や貸借対照表はかなり加工されているものなので、実態をうまく把握できないこともあるのです。事業が不調でも、お化粧がうまい会社はあたかも順調に利益を出しているように見せかけることもできるのです。しかし、キャッシュフロー計算書は基本的には生の事実であるため、ストレートに企業の状態を把握しやすいのです。

キャッシュフローの3分類

以下ではキャッシュフローを構成する3つの要素を解説します。

営業キャッシュフロー

営業キャッシュフローは、その企業の本来の営業活動から生じた現金の「入」と「出」です。売上がすべて現金だと、売上と「売上による営業キャッシュフロー」は一致します。しかし、売掛金で販売したり、受取手形をもらうと売上が現金化するまでに時間がかかります。こうして売上と入金の「ズレ」が発生します。一方、仕入の代金は販売に先行するので商品やサービスをお客様に提供する前にお金が出て行きます。また、給与は毎月定時に支払わなければなりません。こうなると資金繰りに困ることになります。キャッシュフロー計算書を見たら、「営業活動によるキャッシュフロー」で現金がプラス(+)になっているかを確認しましょう。とはいえ+でさえあればいいというわけではなく、最低限経常利益の0.6倍はないと安全とは言えないというのが通説です。

投資キャッシュフロー

投資キャッシュフローは、企業が将来の成長に向けてどれだけのお金を支出したか、また回収をしたかを示しています。事業拡大のために製造業であれば、工場を建設し機械設備に投資しますし、小売業であれば支店や営業所・店舗のために土地や建物に投資をします。投資をすれば、通常はお金が出ていきます。なので、通常は投資キャッシュフローはマイナスです。どれくらい成長に向けて投資を行っているかを知りたいときはここを見ましょう。本業が順調で営業キャッシュフローがプラスになっている会社は、営業活動により稼いだキャッシュを会社の将来のために新規事業に投資を行ったり、または現事業の強化のために設備投資を行う余裕があります。したがって、本業が順調な会社ほど投資キャッシュフローがマイナス(投資をたくさん行っている)になる傾向があります。

財務キャッシュフロー

財務キャッシュフローは、企業の営業活動、投資活動を支えるための資金調達とその返済の状況をあらわします。増資や借り入れをしたり社債を発行するとお金が入ってくるので+です。借入金を返済したり、社債を償還するとお金が出て行くので-となります。

 

キャッシュフローから見る企業の栄枯盛衰

キャッシュフローの観点から、企業のライフサイクルをモデル化することができます。以下でそれを見ていきましょう。

 

投資期

営業キャッシュフローが+、投資キャッシュフローが-、かつ投資フローの絶対値が営業キャッシュフローより大きいのがこの時点です。代表例としてはトヨタなどが挙げられます。積極的に研究開発を行うなど、企業の成長に向けて資金を投入している段階です。

 

安定期

営業キャッシュフローが+、投資キャッシュフローが-、かつ投資フローの絶対値が営業キャッシュフローより小さいのがこの時点です。代表例としてはキャノンなどが挙げられます。もちろん、ここでキャッシュを稼いでおいてまた投資期に進み、また新たなキャッシュを生み出し・・・というバランスのよいサイクルが望ましい企業の姿といえるでしょう。

 

停滞期

営業キャッシュフローも投資キャッシュフローも+なのがこの段階です。少し前のマイクロソフトが代表例として挙げられます。営業キャッシュフローは+だが投資先がなく、金余りの状態です。さらに投資キャッシュフローが+になっているということはすでに保有している工場や店舗を売却しており、その売却金額が入っているということです(他にも配当金などでも+になることもありますが)。すでに投資していた対象物を現金化したということなので、停滞していると疑う必要があります。なぜなら、業績悪化が原因で工場や店舗を閉鎖するなど、事業規模を縮小した可能性があるからです。

 

低迷期

営業キャッシュフローが-で投資キャッシュフローが+なのがこの時点です。投資がなければ次の稼ぎが生まれません。したがって営業キャッシュフローが-になってしまい、すでに保有している工場や店舗を売却したキャッシュで借金を返している状態です。

 

破綻期

営業キャッシュフローも投資キャッシュフローも-なのがこの時点です。とうとう売れる資産もなくなってしまい、稼ぎもないので、破綻する他ないという悲しい状況です…。

 

 

いかがでしょうか。キャッシュフローの正負と大小関係を見るだけで、今企業がどの段階にいるかを見分けることができます。

簡単にできますので、是非企業を分析するときにこの視点を用いて見てください!

※本ページに記載している情報はFactLogicが独自にリサーチ、または各種メディアから収集したものであり、企業が公表している情報ではない場合があります。

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