「元戦略コンサルタント×NRI役員」の視点から紐解く、コンサルタントに求められる価値とは
【コンサルタントの道 vol.10】

sponsored by 株式会社野村総合研究所

連載「コンサルタントの道」第10弾となる今回は、株式会社野村総合研究所(以下、NRI)で執行役員・人事部長を務める柳澤花芽さんをご紹介。柳澤さんは長きにわたり経営戦略立案のプロとして活躍した後、現在は役員としてNRIの人材開発のミッションを担い、外部のコンサルタントに仕事を依頼することもあるそうです。コンサルタントとクライアントの双方を経験した視点で、選ばれるコンサルタントの要件や活躍するコンサルタントを多数輩出するNRIの組織風土について語ってもらいました。

目次

プロフィール
様々な領域とテーマに取り組む中で、転機となったプロジェクト
この道25年のプロが考える、選ばれるコンサルタントの要件
解くべき課題に錨をおろす。役員の立場からコンサルタントに求めること
自由と裁量によって、全員をプロフェッショナルに育てる組織
母親コンサルタントが仕事と子育てを両立できた理由
自己と他者への成長意欲を併せ持つ人が活躍できるファーム

プロフィール

柳澤 花芽(やなぎさわ かが) さん

株式会社野村総合研究所
執行役員 人事・人材開発担当

1991年、NRIに新卒入社。約25年間戦略コンサルタントとして中期経営計画策定や経営管理・組織開発・風土改革・IR/財務戦略など様々な領域・テーマに精通。1999年には長女を出産し、子育てと仕事を両立。2015年に部長職に昇進し、2019年には経営役・人事部長。2021年4月に執行役員に就任し、人事・人材開発を担当。

様々な領域とテーマに取り組む中で、転機となったプロジェクト

 ──まずはじめに、これまでのご経歴を教えて下さい。

1991年に新卒でNRIに入社し、最初の10年は主に情報通信業界のマーケティング戦略・CRM※に関する専門性を磨いてきました。プロジェクトリーダーを多数務めた後、専門性を製造(機械)業界にうつし、中期経営計画策定・グローバル戦略・M&Aなど同業界の中で様々なテーマを経験しました。20年目以降では組織開発・組織風土・人事改革のテーマに専門性を持ち、業界を問わず様々な案件に参画してきました。コンサルタントとしては1つの領域・テーマを究めるというより、少しずつ専門性を変えながら様々な領域・テーマに精通してきました。現在は執行役員としてNRIの人事・人材開発のミッションを担っています。

※CRM=Customer Relationship Managementの略

──情報通信や製造業など特定の”業界”に長い間携わられた後、組織風土改革や人事領域の”テーマ”に専門性を広げたのはどうしてですか?

偶然お声がかかって挑戦した大手飲料会社の組織風土改革プロジェクトがきっかけでした。その会社ではグローバル化が進む中で経営陣が海外に目を向ける一方、縮小する国内市場で人員削減や工場閉鎖を経験した営業部隊や工場員の方々の士気が低下してしまっていることが問題でした。現場の方々に仕事に向き合う力を取り戻してもらうため、全国の管理職の方ほぼ全員にお会いして仕事の意義や組織のミッションについて議論を重ね、中期経営計画や長期ビジョンに反映させることで組織全体の社風を変えていきました。

そのプロジェクトが無事に成功し、徐々に他のお客様からも声がかかるようになり、経営理念の作り変えや長期ビジョンの策定といった領域のコンサルティングを多く経験するようになりました。長い歴史を持つ大企業では、組織階層の上と下のギャップや、創業時の熱い志と現在の気持ちの時間軸でのギャップが存在することがよくあります。ただそのギャップを丁寧に紐解き、離れてしまっている両者を、社史・理念の振り返りや、経営陣と現場の対話によって近づけていくことで組織は非常に良くなります。業界に特化したコンサルティングを行うこともやりがいは大きかったのですが、私にとっては組織が変わっていく過程を目にすることで感じるやりがいはとても大きく、このテーマにとても面白みを感じるようになりましたね。

この道25年のプロが考える、選ばれるコンサルタントの要件

──組織風土はただでさえ目に見えず抽象度の高いものだと思うのですが、外部のコンサルタントに納得度の高い提案ができるのでしょうか?

抽象度が高いからこそ、きちんと問題を定義し、問題を認識させる役割が必要であると私は考えています。組織領域の課題は社内では当たり前で誰も指摘すらしなかったり、そもそもその問題に気付いていなかったりするケースが多々存在します。「なんとなくうまくいかない」というお客様の相談から「その違和感はこういったことが問題ではないですか?」と提案することで、お客様自身が問題を客観視できるようになっていきます。この客観視(=お客様自身が問題を発見すること)こそが、組織が変わるスタートになります。

──約25年にわたり戦略コンサルタントとして活躍してきた柳澤さんが考える、クライアントに選ばれるコンサルタントの要件を教えてください。

「問題を発見し、戦略を示して、戦略を実行する仕組みを設計し、実際に仕組みを動かす」という一連の流れが全てできるようになってこそ、初めてお客様を良い方向に導けるコンサルタントだと言えると思います。よく学生の皆さんがイメージする論理的思考力は当然のことながら、ロジカルに構築した戦略や仕組みを相手に伝え、やる気にさせて、実際に動いてもらえないと、プロジェクトは本当の意味で成功とは言えないでしょう。

特に私の場合、様々な領域・テーマのコンサルティングに関わっていたことが非常に良い経験になりました。幅広く経験を積んでいると、あるプロジェクトでお客様に教えていただいたことが、後になって全く違う業界のお客様とやり取りするときに役に立つことがあります。経営層の悩みは抽象的で、悩みの幅も広いことが本当に多いです。自分が持っている引き出しを最大限生かしながら、お客様との対話経験を増やしていくことで、真に解くべき問題を発見できるようになれたと思います。

今まで様々な企業の経営層とお話してきましたが、「何か分からないけど困った時に柳澤さんを呼べば安心。話すと頭が整理されて、問題点がクリアになるよ」と感謝されたことが多々ありました。ただ相談された課題を解く・仕組みを動かすだけではなく、課題の発見から貢献できたからこそ、プロフェッショナルとしてお客様に認められたと思っています。

解くべき課題に錨をおろす。役員の立場からコンサルタントに求めること

──現在はNRIの組織の課題解決に外部コンサルタントの方と一緒に取り組んでいるそうですね。組織開発に専門性を持つ柳澤さんなら、コンサルタントは不要ではないですか?

確かに仕事のプロセスは同じなので過去の経験が役立っていますが、役員になってみると、人や組織を動かす時の相手が身内に変わり、やりにくいことがたくさんあります。例えば何かを指摘する際も「柳澤さんだって前はこんな考え方でしたよね」と言われるなど、今までよりはるかに多くの不安、不満、反発にぶつかります。

社内にいると様々な雑音が聞こえたり現実が見えたりするので「最初に発見した課題は本当に解くべき課題なのか」がつい分からなくなることもあります。内情をよく理解できるという意味では有利ですが、自分では客観視しづらく、相手も客観視してくれないのは大変な困難です。

──役員の立場で考える、一緒に仕事をしたいコンサルタントはどのような人ですか?

問題発見から実際に仕組みを動かす一連の流れが全てできることは前提として必要です。ただコンサルタントの方に期待する一番の役割は、解くべき問題を発見し、そこにしっかりと錨をおろしてくれることです。これは私自身がコンサルタントの方に支援をお願いするようになって実感したことですが、実は現実の多くのプロジェクトはお客様自身が本質的な課題を見極められないままスタートしてしまうのです。戦略を立てながら、解くべき課題が違ったら戻る、実行段階で新しい問題が出てきたらまた戻る、と反復しながら進むべき方向や大事にすべきことが見えてきて、戦略の確からしさが高まっていきます。現状の正解を常に疑い、課題を深堀りして本質を追求することに対する耐久性や許容力があると、よりお客様の信頼を獲得できるコンサルタントになれるのではないでしょうか。

──戦略コンサルタントと聞くとクールなイメージがあったのですが、想像以上に泥臭さやクライアントへのコミットも大事そうですね。

確かに、正直私が過去にお会いしたコンサルタントの中には、自分の責任の持てる領域に明確な線引きをして「ここまでしか言えません、やりません」というスタンスの方が多かったのも事実です。人によってスタイルは違うかもしれませんが、NRIのコンサルタントはお客様にとことん付き合う姿勢を大事にしている人が多いです。

当社では企業理念にある「お客様とともに栄える」という考え方を、社員みんなが大事にしています。お客様にただ従うだけではなく、かといって自分たちの利ばかりを考えるのでもない。常に変革のパートナーとしてお客様とともに成長することを意識しています。例えば、最初に書いた企画書どおりにプロジェクトが進まなくてもみんな嫌な顔ひとつせずに企画書を書き直しますし、お客様のために必要な軌道変更や路線変更は厭わず、正しいと思うことをやるというスタンスです。そのような姿勢の方にぜひコンサルティングしてほしいと私自身も感じています。

 

自由と裁量によって、全員をプロフェッショナルに育てる組織

──ほかにも、NRIと他のコンサルティングファームとの違いを感じることはありますか?

個の裁量が大きい自由な組織である点は、当社の大きな特徴です。一般的な戦略コンサルティングファームでは、入社するとまずはアナリストやアソシエイトとしてリサーチや分析を行い、次にコンサルタントとしてプロジェクトのエグゼキューション、そしてマネージャーやパートナークラスになると顧客開拓・提案営業や対外発信を行う、というように職位毎に役割がしっかりと設計されています。

それに対してNRIでは、ランクによる役割をあまり細かく規定していません。2年目でプロジェクトリーダーを担う人もいれば、3~5年目で営業提案に携わる人もいますし、若手で書籍執筆など対外発信に取り組む人も多くいます。私は通信業界から精密機器の業界にうつる際に、隣の部のプロジェクトに入れてもらいましたが、部を超えたプロジェクトアサインも当たり前で、若手であっても本人の意志やネットワーク次第で様々なことにチャレンジできる環境です。

──クライアント開拓や対外発信は、他のファームではパートナークラスの方がおこなう印象です。若手より熟練のコンサルタントが担当する方が効率的だと思いますが、なぜ御社では若手でもそのような役割が担えるのでしょうか。

当社は「大多数のソルジャーとひとりのスターを生み出す」のではなく「全員が一人前のコンサルタントとして社会に出て行って欲しい」と考えています。どんなに若手であっても一人前のプロフェッショナルとして認めているからこそ、年次や役割を理由に本人の可能性に蓋をすることはありません。

また若いコンサルタントに対外的な活動を任せることは、本人にとっても会社にとってもメリットがあります。本人は当然、ストレッチな課題に挑戦することで必死に頑張りますし、対外発信をすると様々な方からお声がかかるようになるので、問い合わせに答えるためにますます勉強する、といった好循環が生まれます。そうして、多くのNRIのコンサルタントが注目されれば、NRI自体のプレゼンス向上にも繋がります。

様々な業務にチャレンジすることは苦労も多いですが、むしろそれを誉れに思ってやっている人が多いですね。周りには面倒見のいい先輩が多いので彼らからサポートを受けることもできます。みんな後輩想いですが、手とり足とり、というよりは任せながら育てる風土なので、意欲のある若手がストレッチな課題に挑戦できる体制が整っていると思います。

母親コンサルタントが仕事と子育てを両立できた理由

──ここまではビジネスパーソンとしてのお話しを伺ってきましたが、大学生のお子さんを持つ母親でもある柳澤さんは仕事と子育てをどうやって両立させてきたのですか?

周りの支えが大きかったですね。実は22年前、当社の経営戦略コンサルティング部門の総合職の女性で出産を経験したのは私が初めてでした。グローバルのコンサルティング業界全体でみても、まだ働き方改革が進んでおらず母親コンサルタントが珍しかった時代です。そんな時代でも周りの皆さんがすごく温かくて、私がどうすれば仕事をきちんとこなせるか、またお客様に迷惑をかけないか、ということをとても考えてくれました。

もうひとつ、私にとって仕事はすごく面白いもので、「お客様のために頑張りたいし、お客様が変わっていく姿を実感したい」という想いが原動力になりました。正直、両立は非常に大変でしたが、一つひとつのアウトプットには決して妥協したくないので、必死に取り組んでいるうちにここまで来ました。コンサルティングは決して楽な仕事ではないし、毎日定時で終わるわけでもないし、時には緊急事態も発生します。それでもここまで頑張ってきて全く後悔がないぐらい仕事が大好きなんです。

だからこそ「子育てがあるからここまでしかできないんじゃないか」と自分でリミットを決めることはしませんでした。仕事も子供の状況も日々目まぐるしく変わるので、常に感度高く状況を把握しながら、「今はどちらにどれぐらい時間を割きたいのか、手をかけたいのか」ということを考えながら、ちょうどいいバランスを意識していました。

そんな母親の仕事の姿を近くで見ていたからか、娘も私の仕事について深く理解してくれていたように思います。彼女はいま、コンサルタントを目指すと言ってくれています。自分も目指したいと思える仕事に見えていたのかなと思うと、とても嬉しいですね。

自己と他者への成長意欲を併せ持つ人が活躍できるファーム

──最後に、コンサルタントを目指す学生へメッセージをお願いします。

コンサルタントを志望する人の中には、最初にすこし腰掛けをしてビジネススキルを身につてから、他の仕事にうつればいいと思っている方もいるかもしれません。高いビジネススキルが身につくから「とりあえずコンサルタントを志望する」という人も少なくないのではないでしょうか。

確かにコンサルティングで身につくスキルは他のどんな職業でも通用するものですが、お客様に求められる一人前のコンサルタントになることはそう簡単ではありません。皆さんが想像しているほど効率よく学べるスキルではないと思います。ですから、まずは自分がどんな仕事をしたいのか、何にやりがいを感じるのか、どんなことにモチベーションが湧くのか、といったことをよく考えてみてください。

そのうえでコンサルタントを目指すのであれば、本当の課題や根本原因がどこにあるのかを突き詰めて考えられることが大事です。これは日常から鍛えられるので、自分自身の日常の不都合や嫌な事象が起きていることの根本原因、どうしたらそれを解決できるのかを考え続けてみると良いでしょう。

NRIという観点でお話しすると、自己と他者への成長意欲を併せ持つ人にはとても良い環境を提供しています。自己成長についてはステップバイステップで何かを習得していくというより、様々なことに挑戦するうちにその中で関連性を見つけ、違うスキル同士を結び付け深堀りしていくことでレベルアップしていけるでしょう。また、NRIのコンサルタントはモチベーションの起点がお客様にある人が多いです。私自身「お客様により良い提案をするために自分をどれだけストレッチできるか」ということを常に意識してここまで成長できました。こうした考え方に共感できる人はNRIで活躍できるコンサルタントになれると思います。

就職活動は、不安になることやつらいこともあるかと思いますが、自分を振り返るいい機会でもあります。適度に息抜きしながら就職活動を有意義なものにしてください。