【コンサルタントの道vol.1】コンサル就職は、人生を切り開く自由へのチケット

FactLogicの新連載「コンサルタントの道」は、現役コンサルタントの方々に、仕事の面白さややりがい、活躍するために必要なことなどを伺うシリーズです。 第1回に登場するのは、日系大手事業会社から外資系戦略コンサルティングファーム(いわゆるMBB(*1)のうちの1社)へ転職し、現在マネージャーを務める山本浩輔(仮名)さん。事業会社とコンサルティング会社の両者を経験した山本さんならではの視点で、特に事業会社との違い、トップファームでのキャリアが人生に持たらす価値をお話しいただきました。

*1 MBB:外資系戦略コンサルティングファームのトップである、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループ(BCG)、ベイン・アンド・カンパニーの3社の頭文字を取った略称

目次

プロフィール
1. マネージャーはプロジェクト全体の責任を負う司令塔
2. コンサルに転職した当時は、幅広く使えるスキルを身に付けたかった
3. タフな業務で成長速く、顧客の変化に寄り添える仕事
4. 活躍しているコンサルタントには、深く広い“想像力”がある
5. コンサル就職は新しい人生を切り開く自由へのチケット
6. 「コンサルは事業会社よりも上」という勘違い

プロフィール

山本浩輔(仮名)さん

私立大学出身。新卒で日系大手事業会社勤務ののち、外資系戦略コンサルティングファームへ中途入社。現在はマネージャーを務める。

マネージャーはプロジェクト全体の責任を負う司令塔

——まず初めに、現在のご自身の業務内容について教えてください。

現在はマネージャーで、プロジェクト全体の責任を負う立場として司令塔の役割をしています。プロジェクトの開始時には、ゴールを定義してそのためにいつまでに何が達成されていなければいけないか、どんなリソースがいつ必要になるかを設計し、プロジェクトが走り出してからは、当初描いていた青写真と異なるところを修正していきます。またプロジェクトメンバーの成長のサポートすることもマネージャーの大切な役割です。

当社ではどんなポジションであってもオーナーシップ、すなわち目的の達成に必要な事柄を自分自身で考えコーディネートしていくマインドセットが重要だと考えていますが、マネージャーはこれが特に強く求められます。「このプロジェクトの成功はすべて自分の責任」というマインドセットのもと、チームのメンバーの調査結果をクライアントに提出できる品質に引き上げることはもちろん、日常的にパートナーに対しても指示を出し、クライアントの経営層とプロジェクトに必要なコミュニケーションを取ってもらうなど、全体をマネジメントする必要があります。

ちなみにこうしたオーナーシップは新卒1年目で入社したばかりの人でも同様に求められます。指示を待つのではなく、彼ら自身が彼らに与えられた役割を全うするために必要な行動を考え、必要に応じて役職に関係なく、指示を出すことが奨励されています。

——では、実際にプロジェクトの具体的な流れを教えていただけますでしょうか。

そうですね、仮に、あるメーカーの新規事業戦略・実行プロジェクトだとしますね。まず最初の2、3カ月程度で調査、分析による戦略構築を行います。まず世の中の大きなトレンドや市場の動向、競合状況を調査し、それと並行して複数の専門家から新規事業の仮説を出してもらいます。またクライアントの既存事業の強みも考慮して、どのような市場に入るべきかの仮説を練り上げていきます。その後、決まった戦略をどのようなビジネスモデルで具体化するのか、また必要な要素をM&Aで手に入れるのか自社で新たに構築するのか等のオプションを検討します。場合によっては買収先企業のリストアップや、必要な採用等の設計もしていきます。あくまでクライアントの戦略なので、相手に納得感があるか、やりたいと思ってもらえているかが非常に重要です。

その後もプロジェクトは続きます。最初にざっくり立てた計画を精緻化し、今度は現場の方々と、時間をかけて一緒に実行をサポートしていきます。一気に地道な活動が中心のプロジェクトに様変わりします。大事なポイントとしては、クライアント向けに能力開発のトレーニングを行ったりもするんですよ。コンサルタントが抜けた後、継続的にプロジェクトを成功に導くためにも、コンサルタントの成果物は資料や実行された施策の効果だけではなく、クライアントの中に残る組織能力やマインドセットの変化だと捉えているためです。

コンサルに転職した当時は、幅広く使えるスキルを身に付けたかった

——日系大手企業からコンサルティングファームへ転職した理由を教えてください。

当時はジェネラルなスキルを身に付けたかったからと言うのが大きな理由です。というのも、私の前職は配属の関係で特殊な業務を行う部署が中心だったために、知識が偏ってしまい一般的に通用するようなスキルが身に付きにくかったんです。MBAの取得も検討しましたが、コンサルタントとして働きながらそうしたスキルを身に付けようと考えました。

——前職で何か危機感みたいなものがあったんでしょうか?

特に危機感というほどのものは持っていませんでしたが、それよりも業務自体に退屈してしまったというのが正直なところですね。

日本の大企業とコンサルの大きな違いは、定常業務の割合だと思います。大企業では、先人が築き上げてきたビジネスモデルに沿っていればある程度うまくいってしまうんです。当ファームでは、非常に優秀なパートナーたちが努力を尽くし時間をかけて顧客が解決すべき課題を特定し、一件のプロジェクトを受注し、そこからも紆余曲折を経て成果物が出来上がっていきますが、前職ではそれまで積み上げた事業資産を使って仕事を進めれば私自身のそれなりの努力で数千万~数億円の売上が立ってしまっていた。

これは疑いようもなく大企業の強みですが、私は少し退屈を覚えてしまったわけです。もちろん、大企業でも事業内容や部署によりますし、何より学びというものは自分の意欲次第だとは思うのですが、私は環境からプレッシャーを受けないと頑張れないタイプなので、外に出るべきだと思いました。

ちなみに、コンサルタントも、仮説を立てて検証という流れ自体は定常業務と言えなくもないのですが、大企業のそれとは抽象度が違い、4年間働いてきた中で既視感を感じたことは殆どなかったです。当然、苦労しますが、その分様々な経験ができましたし、学びも大きかったなと感じますね。

タフな業務で成長速く、顧客の変化に寄り添える仕事

——コンサルタントのやりがい/面白さを教えてください。

まず1つ目は、クライアント企業の変化を目の当たりにできることですね。1、2年ほどクライアントに伴走して実行支援まで行うと、プロジェクト開始時と比べて、トップから末端まで全く違う組織に生まれ変わっていることがあります。当初は「こういう理由で無理」と言っていたトップマネジメントの方が、「できるようにするにはどうすればいいか」と議論していただけるようになっていたりするんですよ。こういった変化を見ることができるのはコンサルタントならではだと思いますね。

2つ目は、多様な企業の多様な業務に触れることができることです。様々な業界のトレンドや業界のキーマンの考えなど、業界知識を得ることができ、知的好奇心も満たされます。また、業界や機能をまたいで仕事をするため、たとえば営業と調達の本質的な共通点を見出すなど、俯瞰して業務や事業を見ることができるのが面白いですね。

3つ目は、成長スピードの速さです。当社では、コンサルタントとして身につけていくべきことが具体的に細かく言語化されているため、成長のプロセスが目に見えてわかりやすいと思います。例えば、2週間に1回の1on1で、学びたいことを確認し、それに合った業務を丁寧に設計し、アサインして成長をサポートしてくれるんですよ。例えばマネージャーとして「トップマネジメントと深い議論を通して関係を構築する経験が欲しい」と言えば、パートナーが「じゃあx月xx日の社長ミーティングを任せよう」なんて言ってくれて、調査、資料作りからゲームプランニングまで付き合ってくれるんです。そんな感じで入社1日目から少しずつ上を目指して鍛えられるので、新卒で入社した人でも2、3プロジェクト回せば社会人数年経ったかと見紛うほどの実力がついているくらいに成長が速いです。私の期待値か低いだけかもしれませんが(笑)

——では、コンサルタントの大変さも教えていただけますか。

まず大変なのが、ワークライフバランスが取りづらいことです。プロジェクトが計画通りにいかないことも多く、やはり業務が平日夜や土日に食いこむことも多く、もちろん疲れはたまりますし、家族との時間やプライベートな時間が犠牲になってしまうこともあります。
もう1つが、これもワークライフと関係はすることですが、能力的・時間的なプレッシャーですね。常に、今の自分ができることより少し難しいことを、厳しい時間制限の中で達成することが求められ、またクライアントからの要求レベルも高く、大事な会議の最中に論理の抜け漏れが発覚して冷や汗をかいたこともあります。

——御社でも特にパフォーマンスの高い方はどういう働き方をされているのでしょうか。

人によるとは思いますが、私から見るとハイパフォーマーは、7割くらいの時間で上司やクライアントの期待を満たし、残りの3割で別のことをしている印象です。例えば期待以上のクオリティの成果を出す、周りの同僚が困っている時に手助けをする、社内の別のワーキングチームに入る、などです。結果的に彼ら彼女らは能力が磨かれるとともにクライアント、社内の双方から信頼を勝ち取り、徐々に強固なネットワークを構築していくことで、ますますパフォーマンスが上がりやすい。そして、こういう人たちがパートナーになっていきますね。

活躍しているコンサルタントには、深く広い“想像力”がある

——では、もう少し具体的にコンサルタントとして活躍できる人の特徴を教えてください

活躍している人は、まず、知的体力があります。 コンサルタントは常に考えることが必要とされる仕事ですから、普段から「これはなぜこうなるのだろう」というのを考え続けていることが大事ですね。

また、当たり前ですがIQ的な能力も高いほうが楽です、具体的には、論理的思考力、記憶力、想像力などでしょうか。論理的思考力や記憶力はよく言われる頭の良さのことですが、想像力はコンサルタント、特にマネージャーにとって重要な腕の見せどころだと思うんですよね。

例えば、クライアントの会社について、社長は決算発表後に株価下がったから今後はこうしたい、と考えていて、一方で、部長は部長レースがこうなっているからこういうフワっとした施策は好まないだろう、とか、現場は、今複数の施策が全社で走っていて忙しいので、コンサルが入ってきて下手に口出したら怒り出すだろうな、これらを考え合わせると、このタイミングでこの人とこれを握って、、、といったような感じで、今後、異なる立場の人たちの思惑や意向を踏まえ何が起こるかをイメージしながら、プロジェクトを設計していくために、深さと広さの両面で想像力が必要だと思っています。

また、課題を明確にすることもとても重要です。順番は前後しましたが一番重要かもしれません。大きな組織では往々にして「これが問題だ」「これも問題だ」「こっちもまずい」といった課題が山積していて、何が原因なのか、何が重要なのか全然わからなくなっていたりしますが、これにすべて対応していたらあっという間に月日が経ってしまいます。このようにプロジェクトの中で本当に解決すべき課題は何かを見極めていくためにも、私は論理的思考、記憶、想像力が大事かなと思っています。

EQ的な能力と言いますか、コミュニケーション能力も重要です。共感力はもちろん、相手によってキッパリと伝えられる能力も含まれます。相手の部長クラスの人に反発されるのを覚悟でガツンと言わなければならないこともありますからね。いつも内心ビクビクしながら、相手のためになると信じて「こうすべきではないでしょうか」なんて言ってます。

最後に、このご時世あまり大きな声では言えませんが、仕事にコミットしていることもやはり活躍できる人の特徴ですね。体力があり、必要に応じて1日十数時間でも平気で働ける人はやっぱり強いです。

——次にコンサルに向いていない人の特徴を教えていただけますか。

向いていない人という言い方だと、「コンサルに来るな」というニュアンスになってしまうので、それよりもコンサルタントになりたいなら改善すべきポイントを、マインドセット面からいくつかあげますね。

1つ目に、受動的すぎるのはよくないです。先ほどお話ししたように、コンサルタントはオーナーシップを持って働くことが重要で、受動的すぎると様々な機会を失うことになってしまいます。自分でゴールを決め、自分で道を切り開く気持ちでやってもらいたいですね。

2つ目に、学びに対してオープンではないのもNGです。これはコンサルだけではないと思いますが、自分の意見や成果物が否定されることを建設的に捉え、より良い答えへの途中だと考えられるマインドを持てると良いですね。

3つ目は、謙虚すぎるのは直す必要があります。コンサルタントの商品は目に見えないので、クライアントからの印象がとても重要ですが、その3割くらいを形作るのが、コンサルタントの自信なんですよね。いかに能力が高くても自信がなさそうな人は信用されないので、自分が謙虚なタイプだと思う人は、自信満々に振る舞えるようになることが大事ですね。変化を起こすのが仕事なので、信じてもらうのも仕事だと割り切りましょう。

その他、必要な能力については先に述べた通りです。このあたりの伸びしろは面接で見極めたいと思っていますので、興味がる方はぜひ来ていただければと思います。

コンサル就職は、新しい人生を切り開く自由へのチケット

——キャリアにおけるコンサル就職とは、どういうものだと思われますか?

語弊を恐れず言えば、自由になれるチケットが手に入る、というイメージです。コンサルタントは、腕一本で生きていくエンジニアのような方々を除けば、事業会社に比べて生活・キャリアの自由度が高く、普段忙しい分プロジェクトとプロジェクトの間で長期の休暇を取ることもできますし、4、5年当社で働いた後に次にやりたいことを見つけて転職していく人も非常に多いです。海外の会社に入ったり、MBAに行ったり、多彩な経験をしやすい環境だと思います。それまでは会社から異動の辞令が来るのが当たり前だと思ってきましたが、自分でやりたい仕事を選択していく人生もあるんだなと。こう言うと当たり前のことなのですが、私はコンサル的なキャリアの築き方に合っているなと感じています。

——なぜコンサルタントのキャリアは自由になれるのでしょうか。

コンサルタントの仕事を通じて、スキルと自信がつくというのが大きいですね。コンサルタントとして働くと、汎用性の高いスキルセットとともに知的体力もつくので、どんな業種のどんな職種に行っても、比較的早期にキャッチアップして活躍できる可能性が高いと思います。また、その手ごたえと言いますか、自信がつくのも重要です。多くの同僚や先輩が、実際に自由に次のキャリアへ羽ばたいていくのを見られるというのも影響していますね。

「コンサルは事業会社よりも上」という勘違い

——最後に、コンサルタントを目指す学生にメッセージをお願いします。

昨今、コンサルが人気と聞きますが、「コンサルに入っておけば将来も安泰」とは思わないようにしてください。先ほど言ったことの裏返しですが、コンサルティングファームから事業会社に転職する際は「何でもできるけど、何もできない人」になりやすいと思っています。元コンサルは学ぶのが得意だとは思いますが、当然ながら学びなおしが不要になるわけではありません。卒業生が全員、華々しく活躍しているわけでもありません。

また、コンサルタントを目指す学生の中には、(就職難易度が高いことから)「コンサルは事業会社よりも上だ」と勘違いしている人もいますが、このように偏差値的にランクできるという考え方はやめた方がいいですね。役割が違うだけです。コンサルに行ってたくさんの優秀な人に出会いましたが、同時にクライアントの方々の中に、事業会社で自分の強みを磨き続けた、驚くほどのハイパフォーマーの方がたくさんおられました。
あと、これは私見ですが、もしすでにやりたいことがはっきりしている人なら、起業するのも良いんじゃないかとも思っています。日々、刻々と変わる経営課題に向き合って自ら解決していく、というのも楽しそうですよね。

色々言いましたが、入社後タフワークの中でもしっかりチャレンジしてスキルを身につける覚悟があるなら、やはり1社目としてコンサルティングファームは強くお勧めできると私は思います。特に新卒コンサルの方々は5-6年もすれば様々な業界、業種に同期が散らばって広く強いネットワークが出来ており、うらやましいくらいです。苦労はするが後悔はしないはずと思って、安心して入ってきてもらえればと思います。

これを読む皆さんの中から将来、私のプロジェクトチームに入ってきてくれる方がおられると思いますので、大いに楽しみにしています。面接の準備など大変かもしれませんが、ぜひ頑張って下さい!

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